心 の 隙 間 か ら 出 て お い で
春のスープ
2007-03-14 Wed 00:09
春が訪れて。
今、寒い夜が訪れた。
こんなに寒い夜だから、お婆さんはスープを作る。
鍋の中で春をいっぱいに溶かして。
寒い夜を、どうしようもなく温めたいと思って。





穏やかな火にかけて
ゆっくりゆっくり
煮込みましょう

憎しみのループを
緩やかに溶かすように

急がず時間をかけて
じっくりじっくり
煮込みましょう

悲しみのループが
透明に溶け込むように

温かさが
少しでも長く続くように
器は温めておきましょう

あとは椅子に腰掛けて
しばらくここで
待ちましょう

ゆっくりと訪れるまで
寒い夜に
種火ほど細くなってしまった
春を
見失わないように

待ちきれぬほど待った時
ようやくすべて煮詰まった時

たっぷり
空の贈り物のように
陽気なパウダーをかけたなら
机の上に置きましょう

ラップをかけておきましょう

温かさを少しだけ

閉じ込めておくように






猫を夜に引き止めておくことができないのと同じように、狭い家の中に閉じ込めておくことはできないのだ。
春が柔らかく溶け込んだスープは銀のスプーンを経由して、それは広い世界の中では限定的な春ではあったけれど、寒さだけが押し寄せてくる繊細な夜の中でお婆さんの心を少しだけ陽気にした。
春は色んな形をしていて、どれもが皆新しい。
なぜ、春は訪れるのだろう?
お婆さんはスープの中に視線を落とし、答え探しを始めた。

その横顔は、春の湖を覗き込む白鳥のようだった。

答えは冷気となってお婆さんの顔をかすめ、逃げ出していく。
だからお婆さんは、スープに永遠のラップをかけることにした。






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