プチ屋台
2007-03-06 Tue 01:08
陽が暮れかかる頃、お婆さんは店を出す。
陽が暮れた頃、お婆さんは片付け出す。
お婆さんの小さな店。
開店時間は、とても短い。
訪れる客と同じように、ほんの少し。

「少しだけだよ……」





すべて言い尽くせば
寂しくなるから
今日はひとつだけ

すべてを伝えると
重すぎるから
今日は微笑むだけ

少しずつ
少しずつ
春を手繰り寄せるように
あなたの気を引いていく

明日は何を話そうか
眠る前に眠りながら
眠った後で

まだまだ
まだまだ
伝えてない言葉が
たくさんたくさんある

一度に言い尽くすと
怖くなるから
十五夜が去っていくように
ゆっくりと

流れる雲のバラードのように
枯れることはない

あなたを想う気持が

あふれてくるから






少しの愛が、猫の口を通り抜けた。
猫は、時々お婆さんの店でもつまみ食いをする。
少し食べて、少し眠って。
それから少し食べて……。
そうして、お婆さんのたこ焼きからタコが逃げていく。
だからお婆さんは、片付けを急がなければならない。
売れ残った丸い玉を、猫は寂しげに眺めた。

その横顔は、黒い墨の向こうに月を見つけたタコのようだった。

雲が厚さを増し始めた。
今日は月も見えないかもしれない。





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