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2007-03-02 Fri 03:42
待合所で猫が待っていると、お婆さんが戻ってきた。
手で頬を押さえて痛々しく……。 猫は同情の色に染まりながら、近づく。 長い戦いを終えて、ようやくに帰途につける。 お婆さんは、下足箱から靴を取り出そうとしたけれど、 そのままお地蔵さんのように固まった。 私の靴は 私を置いて 行ってしまった 先行くひとは気づかずに 残ったものは途方に暮れる 私の靴は もうひとりで 逃げていった 同じような服を着て 同じような暮らしを送り 同じように間違えて 行ったひとは笑っている 言われたひとは泣いている この靴は 誰の靴 知らない靴 似たような形をして 似たような艶をして 似たような真似をして 行ったひとは忘れている 言われたひとは忘れない 私の靴は 今はどこを 歩いているだろう 行ったひとは気づかない 置かれたひとは傷ついて 戻らぬ足音を想っている ひとりでは 歩き出せないまま 歩き出せないまま、お婆さんは頬を押さえていた。 二重の災厄に苛まれながら、なんとか立っている。 猫は知らなかった。 靴を履かねばならぬものの苦労や哀しみを……。 けれども、突然に赤い靴をくわえた。 お婆さんの前にちょこんと置いてみた。 その横顔は、赤い靴を置いた猫のように血が通っていた。 お婆さんは、意気に感じて踏み入れた。 不思議とそれはよく合った。 シンデレラのように歩き出した。 |
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| 猫と婆とそんな横顔 |
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