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春の小旅~エピローグ『桜坂』

さくらくる
くらくらしたら
らくだくる
ざわざわさわぐ
かわにゆられて

お婆さんは、また歌い始めた。
二人用のレジャーシートも、猫とお婆さんには十分に広い。
猫は甘ったるい酒に舌をつけた。
素面では聴けない歌もあると知っているのだ。




さくら さくら
みんな さくら
呼ばれてただやってきた
一時だけのキャストなの

種を蒔いたら集まった
筋書き通り上っていた

さくら さくら
みんな さくら
花がなくなりゃ 散っていくよ

さくら さくら
みんな さくら
意志も薄くやってきた
見かけだけのゲストなの

種を求めて集まった
筋書き見えて下りていった

さくら さくら
みんな さくら
風が変われば 転げていくよ

さくら さくら
みんな さくら
いつの間にか 同じ色

さくら さくら さくら

あなたも一緒に 染まろうよ





お婆さんも猫も、桜色に染まっていた。
朝一番にやってきた二人だったが、気がつけば周りに随分と人の影が増えている。
彼らはみんな良心的な桜泥棒なのだ。
桜色の猫の思考は、やはり甘くなる。
お婆さんの歌に対しても……。

叫ぼうか
九九をわざわざ
楽だから
ざんげは届く
仮初めの朝

宙を舞った桜が、一瞬そのままとどまった。
猫はその枚数を数えようと、目を光らせた。

その横顔は、傾きかけた桜坂に立ち止まった一句のようだった。

歌心などは特にくっついていなかったけれど、
春は、儚く甘やかな匂いがした。







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テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

春の小旅『記念写真』

朝の中を歩いた。
今日はいい天気になりそうだ。
猫の予感は、人の予報よりも概ね正しい。
風も昨夜と比べれば、嘘のように角が取れている。
ちょうどお婆さんのように……
お婆さんは、元気だろうか?
猫は、朝を通り越して見知らぬ公園に入った。




忘れた頃に
あなたは戻ってくる

ようやくに
忘れかけた頃に
あなたの影だけが
追いかけてくる

だからまた
忘れられなくなる

忘れたと
思った頃に
あなたは戻ってくる

声も笑みも
消えかかった頃に
あなたは戻ってくる

だからまた
消せなくなる

だからまた
恋しくなる

何度目かは
忘れてしまった

ずっと変わらない
あなたの
誕生日





お婆さんが、待ちかねていた。
風が暖かくなったのは、お婆さんのせいかもしれない。
見知らぬ人にカメラを渡して、お願いする。
二人並んで、春をバックに記念写真を撮るのだ。
猫は少し照れながら、右手を上げた。

その横顔は、ようやく春にたどり着いた旅人のようだった。

「今日は、春の誕生日だよ」

お婆さんが、空に向かい声高らかに宣言した。
猫にとっては、お婆さんが春だった。





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春の小旅『はじかれて』

猫は歩いていた。
夜が包み込んだ見知らぬ街には、
季節外れのジェネラルが舞い降りて、
白い風を容赦なく送りつける。
今にも猫は、その冷たさにはじかれそうだった。




真冬のおはじきのように
冷酷に
適当な方向へ
飛ばされる

不条理な計算が導くままに
はじき出される数字のままに

僕らは
いつしか
つまはじき

真冬のおはじきのように
冷徹に
単調な決定で
飛ばされる

思い上がりの計算力のままに
はじき出される数字のように

僕らは
気づけば
つまはじき

キラキラ光る
封じ込められた命
月に優しく乱反射して

はじかれても
はじかれても

負けずに逃げて行く

自由になった星のように

割り切れぬ春だけを
半透明に秘めながら





ふらつきながらも、猫は歩いた。
その歩みには、どんな想いが秘められているというのだろう……
猫は風の支配する夜の中を、果てしなく歩いた。

その横顔は、夜露で出来たおはじきのように光って見えた。

夜の向こうに何かが見え始めた。
それは、春ではなく朝だった。




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春の小旅『終点を越えて』

猫は歩いた。
テリトリーを飛び出して進んだ。
未知の世界には、どんな外敵がいるかわからない。
猫は、いつにも増して慎重だ。
わくわくと、どきどきを巧みに絡めながら歩き続けた。




終着駅のその先に
見知らぬ道がある

僕は歩こう
行き先も考えず
歩いていれば
きっとみえるさ

自分が動けば
風景も変わる

終着駅のその先に
見知らぬ人がいる

僕は進もう
後先も考えず
動いていれば
歩幅は変わるさ

自分が変われば
世界も動く

終着駅のその先に
見知らぬ僕がいる

歩道もない田舎道
時間も気にせず
ゆっくり歩こう

新しい春に
行き当たるまで





行き当たるものは何もなかった。
ただ、お婆さんの家が遠のいただけだった。
けれども、猫は振り返ることなく歩いた。

その横顔は、終点のない季節のように揺れていた。

春はまだ見つからない。
だから、猫は歩き続けた。





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春の小旅~プロローグ

寒い。
どうしたことか……。
猫は、見上げながら首を傾けた。
予報では、もうすぐ桜が花開くと聞いたのだけれど……。
猫は、人の言葉をまともに信じたことはなかったけれど、
風が猫の不安を募らせた。




黒い
どこまでも続く
夜のように

どこまでも広がる
闇のように

このおかしな空は
いつになれば
晴れるのだ

寒い
いつまでも続く
アンコールのように

いつまでも帰らぬ
客人のように

このおかしな風は
いつになれば
暖まるのだ

長い
どこまでも続く
獣道のように

どこまでも消えない
迷い道のように

このおかしな世界に
いつになれば
なれるのだ

わからない
どこにいても
白昼夢のように

わからない
どこにいても
流れ星のように

このおかしな自分に
いつになれば
なれるのだ

いつになれば
なれるのだ

自分という存在に





存在を打ち消さんばかりの風だった。
猫は風から逃げるように、道を折れた。
少し震えながらも、前を向く。

その横顔は、春のプロローグのように小さかった。

猫は、力強く一歩ずつ歩いた。
今から春を、探しに行くのだ。



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たこ焼きvs回転焼き

突然、ライバルが現れた。
お婆さんの出店のすぐ隣にやってきたのだ。
お婆さんはたこ焼きをひっくり返しながら視線を飛ばす。

「回転を焼くとはどういうことだい?」

猫も椅子の上で、クルリと回転した。
夕焼けがいい感じに焼けてきている。




夕焼け染まる街角を
汚れたエピロンなびかせて
今日も婆は回ります

天空のバレリーナのように
雨よりも細く
愛よりも優雅に

夕焼け深い風浴びて
はぐれた小猫を引き連れて
楽しく婆は回ります

稀にみる惑星のように
時よりも深く
愛よりも優雅に

クルクルと

クルクルと

架空の軸を描くように

生きた証しを

焼けつけるように





焼き上がったところで、満員電車のように詰める。
待ちわびていた子供が、猫の手に100円を置いて、
うれしそうに帰って行った。
ふと隣の店を覗き込むと、恐ろしいほどに回転している。
猫は思わず目を疑った。

その横顔は、無回転シュートに目を回すファンデルサールのようだった。

えらい店が開店したものだ、
猫はそう思った。




春のスープ

春が訪れて。
今、寒い夜が訪れた。
こんなに寒い夜だから、お婆さんはスープを作る。
鍋の中で春をいっぱいに溶かして。
寒い夜を、どうしようもなく温めたいと思って。





穏やかな火にかけて
ゆっくりゆっくり
煮込みましょう

憎しみのループを
緩やかに溶かすように

急がず時間をかけて
じっくりじっくり
煮込みましょう

悲しみのループが
透明に溶け込むように

温かさが
少しでも長く続くように
器は温めておきましょう

あとは椅子に腰掛けて
しばらくここで
待ちましょう

ゆっくりと訪れるまで
寒い夜に
種火ほど細くなってしまった
春を
見失わないように

待ちきれぬほど待った時
ようやくすべて煮詰まった時

たっぷり
空の贈り物のように
陽気なパウダーをかけたなら
机の上に置きましょう

ラップをかけておきましょう

温かさを少しだけ

閉じ込めておくように






猫を夜に引き止めておくことができないのと同じように、狭い家の中に閉じ込めておくことはできないのだ。
春が柔らかく溶け込んだスープは銀のスプーンを経由して、それは広い世界の中では限定的な春ではあったけれど、寒さだけが押し寄せてくる繊細な夜の中でお婆さんの心を少しだけ陽気にした。
春は色んな形をしていて、どれもが皆新しい。
なぜ、春は訪れるのだろう?
お婆さんはスープの中に視線を落とし、答え探しを始めた。

その横顔は、春の湖を覗き込む白鳥のようだった。

答えは冷気となってお婆さんの顔をかすめ、逃げ出していく。
だからお婆さんは、スープに永遠のラップをかけることにした。





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ジャンル : 小説・文学

準備中をぶっとばせ

コンビニに臨時休業などあるものか……。
ドアに貼られた紙は偽物か?
お婆さん刑事の鋭い推理が展開する。
放置された自転車を担ぎ上げると、ドアに投げつけた。
硝子が明日にかける嘘のように粉々に砕けて。
いよいよ突入だ。
いいぞ! お婆さん!
猫も、あとに続いた。





クローズと書かれた
寂しいドアを蹴破って
風のように入ったら

無人のような静寂が
優しくあちらこちらに
散らばって

私は声を上げて
人探しのように
叫びます

だれかだれか
だれかだれか

早く出てこないと
私は帰ってしまいます

だれかだれか
だれかだれか

早く出てこないと
すべて忘れてしまいます

クローズと唄う
冷たいドアのように

何かが始まる前に

もう






中に入ると、誰もいない。
それどころか、お菓子のひとつもないのだった。
猫は大いにがっかりした。

その横顔は、昔々と言い始めない物語のように寡黙だった。

「ここを廃墟にしてしまったのは、いったい誰だろう?」

お婆さん刑事の、言葉が店内にこだまする。
その捜査と同じように、ただ空を切っていた。








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プチ屋台

陽が暮れかかる頃、お婆さんは店を出す。
陽が暮れた頃、お婆さんは片付け出す。
お婆さんの小さな店。
開店時間は、とても短い。
訪れる客と同じように、ほんの少し。

「少しだけだよ……」





すべて言い尽くせば
寂しくなるから
今日はひとつだけ

すべてを伝えると
重すぎるから
今日は微笑むだけ

少しずつ
少しずつ
春を手繰り寄せるように
あなたの気を引いていく

明日は何を話そうか
眠る前に眠りながら
眠った後で

まだまだ
まだまだ
伝えてない言葉が
たくさんたくさんある

一度に言い尽くすと
怖くなるから
十五夜が去っていくように
ゆっくりと

流れる雲のバラードのように
枯れることはない

あなたを想う気持が

あふれてくるから






少しの愛が、猫の口を通り抜けた。
猫は、時々お婆さんの店でもつまみ食いをする。
少し食べて、少し眠って。
それから少し食べて……。
そうして、お婆さんのたこ焼きからタコが逃げていく。
だからお婆さんは、片付けを急がなければならない。
売れ残った丸い玉を、猫は寂しげに眺めた。

その横顔は、黒い墨の向こうに月を見つけたタコのようだった。

雲が厚さを増し始めた。
今日は月も見えないかもしれない。




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赤い靴を置いた猫

待合所で猫が待っていると、お婆さんが戻ってきた。
手で頬を押さえて痛々しく……。
猫は同情の色に染まりながら、近づく。
長い戦いを終えて、ようやくに帰途につける。
お婆さんは、下足箱から靴を取り出そうとしたけれど、
そのままお地蔵さんのように固まった。





私の靴は
私を置いて
行ってしまった

先行くひとは気づかずに
残ったものは途方に暮れる

私の靴は
もうひとりで
逃げていった

同じような服を着て
同じような暮らしを送り
同じように間違えて

行ったひとは笑っている
言われたひとは泣いている

この靴は
誰の靴
知らない靴

似たような形をして
似たような艶をして
似たような真似をして

行ったひとは忘れている
言われたひとは忘れない

私の靴は
今はどこを
歩いているだろう

行ったひとは気づかない
置かれたひとは傷ついて

戻らぬ足音を想っている

ひとりでは
歩き出せないまま






歩き出せないまま、お婆さんは頬を押さえていた。
二重の災厄に苛まれながら、なんとか立っている。
猫は知らなかった。
靴を履かねばならぬものの苦労や哀しみを……。
けれども、突然に赤い靴をくわえた。
お婆さんの前にちょこんと置いてみた。

その横顔は、赤い靴を置いた猫のように血が通っていた。

お婆さんは、意気に感じて踏み入れた。
不思議とそれはよく合った。
シンデレラのように歩き出した。




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junsora(望光憂輔)

Author:junsora(望光憂輔)

おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
たいした意味などありゃしない


旅の途中の紙くずたち
今日も散らばって行こう
いつも破り捨てられても

猫と婆とそんな横顔はリンクフリー
「喜多さん、いいとこばっかじゃねえか」

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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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