心 の 隙 間 か ら 出 て お い で
お婆さんリサイタル『アンコール』
2007-02-20 Tue 17:55
ステージの上に再びお婆さんは戻ってきた。
熱心にエールを送る観客に応えて……。
もう一度いまステージに立っている。
もう一度マイクに両手を乗せた。





もう一度
繰り返せ

好きなように

伝えたいことがあるなら
切々と

繰り返しの
唄のように
笑いのように
語り継がれる歴史のように

通じるまで

繰り返せ

良いことは

謝りたいことがあるなら
深々と

頭を下げるように
言葉は
更に下から

誠意が通るまで

繰り返せ

明るいことは

昨日の今日のように
日々の決まりごとのように
誕生とフィナーレのように
総当りの試合のように

繰り返せ
ゆるゆると

繰り返せ
もう一度

優しい言葉

繰り返せ

愛していると

毎日のように






お婆さんは優しく歌い上げると、ステージを見下ろした。
けれども、猫はもう眠っていた。
猫は飽きっぽく、それにも増してよく眠る猫だった。

その横顔は、繰り返される日々に疲れ果てた子供のようだった。

まだ少し、あどけなさのようなものが残っているが。
繰り返し、いびきをかいて。
まるで自分がリクエストしたことなど、すっかり忘れてしまったように……。




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