心 の 隙 間 か ら 出 て お い で
お婆さんリサイタル『ひとりいた』
2007-02-14 Wed 00:42
ステージの上にお婆さんは一人。
けれども、もうひとりきりではなかった。
猫が、真冬のヒマワリのように客席に咲いている。
たったひとり、けれど眠りもせずに……。
だからお婆さんは、勇気を取り戻し歌うことができたし、
だんだん声も出るようになってきたのだ。





ゼロの中からひとつだけ
見えてきたのはひとつだけ

それは似ているようで

ONとOFF
虚無と夢

白と黒
静と動
空と海

ゼロの中からひとつだけ
見えてきたのはひとつだけ

その隔たりは
近くて遠くて

光と闇
沈黙と笑顔
空ときみ

ゼロの中からひとつだけ

きみのいちは
いまとなり

きみのいちは
永遠となり

ゼロの中から現れた

輝いたのはきみひとり






猫の目が一番星のようにキラリと輝いた。
輝くものは他になかったのだけれど、それは兄弟星のように二つ並んでいた。
お婆さんは水を一口含み喉を潤した。
ガラガラの客席に向かって、発表する。

「これで最後の歌になります」

もうおしまいか……
猫は少し不満げに眉間に皺を寄せた。
その横顔は、打切られた連載を前にした読者のひとりのようだった。
もう、最後の歌か……。




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