お婆さんリサイタル『何度見ても』
2007-02-11 Sun 17:05
ステージの上に、うなだれたように一人。
お婆さんは立ち尽くした。
まさか誰一人いないとは驚いた!
驚きを隠せないまま、お婆さんは歌い続けた。
隠す相手も、その必要さえもなかったのだけれど……。





何度見ても同じだよ
だけど何度も見るんだよ

大きな小箱に
小さく沈む
キラリ

一枚
乗りかかるように
もう一枚

ひとつひとつ
薄っぺらい
形をしてる

透明な箱を
視線だけが
痛みながら貫通する

何度見ても同じだよ
何も投げかけていないんだから

大きな世界に
小さく沈む
ひとり

一人
寄りかかるように
もう一人

ひとりひとり
好き嫌いのある
顔をしてる

何度見ても同じだよ
だけど何度も見るんだよ
手を合わせても同じだよ
誰も見てはないんだよ

眠っている思い出に
雪が降り積もるように

ひらひらと優しい光景は
かなしい幻想の中で
散っていくだけで

何度見ても同じだよ
誰も投げ入れてないんだから

何度見ても同じだよ
だけど何度も見るんだよ
願いをかけても同じだよ
誰も聞いてはないんだよ

小さな箱の中では
心の奥深くまでもが
見透かされているようで

直視はできないから
何度も視線を背けながら
何度となく

何度となく

何度見ても同じだよ
だけど何度も見るんだよ

だから何度も泣くんだよ






歌い終えると、お婆さんは泣いた。
目からサラサラと流れるものがスポットライトを浴びて。
それは宝石のように輝いた。
けれども、お婆さんは客席の中でそれとは別の宝石を発見した。
好奇に輝きながら……。

猫が、ちょこんと座りステージを見上げていた。

その横顔は、何度見ても新しいような懐かしいような猫の顔だった。

ひとりいた。
ひとりいたか……。




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