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新しい旅『永遠の唄』

猫とお婆さんは歩いた。
新しく塗り替えられていく物語の中で、一筋だけ取り残された道の上を。
時々、理由もなく立ち止まったり、振り返ったりしながら。
そして、懐かしい唄に微笑みながら……





何度でも何度でも
おばあさんの
口癖のように

何度でも何度でも
きみの唄をうたってよ

繰り返し繰り返し
おはようとさよならの間で
きみの唄を聴かせてよ

何度でも何度でも
恋のかたちを
唄ってよ

何度でも何度でも
僕は同じ
唄を聴くから


繰り返される争いと
塗り替えられる暮しに

明日の道が歪んだら
深く沈んだ足下で

繰り返し繰り返し
愛のかたちを
唄ってよ

繰り返し繰り返し
繰り返しきみの
唄を聴くから


さよならとさよならの間を
何度も何度も
つないでよ

永遠の愛のように

変わらないものに
支えられながら

世界は少しずつ
変わり続けていくのだから

少しだけ愛ある方へ
再びきみの声を貸して


何度でも何度でも
また唄ってよ

あの優しい

おばあさんの口癖のように






幻の本通商店街を通り抜けた。
猫もお婆さんも、もう後ろを振り返らなかった。
もしも、そうしてしまったら……
すべてが幻だったと気づいてしまうかもしれないから。

懐かしい唄も、もう聞こえなくなっていた。
その代わり懐かしい街並が見えてきた。
バスで出発した旅を、二人は歩いて戻ってきたのだ。

いま、二人で踊ったバス停の前にいた。
落葉は、もうそこになかったけれど……
夕日が、優しい色使いで旅人を出迎えていた。

今度はどこに行こうかな……
猫は期待を込めてお婆さんを見つめた。
その横顔は、新しい旅を待ち焦がれる猫のようだった。






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テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

新しい旅『幻の本通商店街』

駅はおろかバス停さえも見当たらない。
地図に沿って進んでいくと、道は徐々に寂しさを増していった。
先ほどまでの馬鹿騒ぎが、まるで夢の出来事のように思える。

あるいは、これも夢の一部か……
猫は不安そうにお婆さんを見上げた。
お婆さんは、突然進路を変更した。
地図の上の矢印をなぜか無視して……





懐かしい色に
誘われるように

進路をはずれ
足を踏み入れた

瞬間始まる時間旅行

細い道

誰もいない

大売出しの旗が
うそぶきながら揺れている

だけど
定休日

だけど
臨時休業

静かな本通り

誰もいない

すべて閉ざされた
あるいは半分閉じたままの
シャッターが並ぶ

ラーメン屋は
4時まで閉じている

ただ床屋の主人だけが
店の椅子で
新聞を開いている


懐かしい曲が
空の上から
時の向こうから
流れてくる

足を止めて
振り返れば

誰もいない

誰もいない

ここは幻の本通商店街


冬の向こうから
風が吹けば
空が少し近くに見える

澄んだ空の下
旅人の歩みの上を
万国旗が輝きながら
宙に連なって


ふと忘れた頃に

人が歩いているのが
視界に入ってくる時

それはやはり
エキストラなのだから

ここは幻の本通商店街


遥か空の向こうから

懐かしい曲が聞こえてくる






不思議な懐かしさに、猫はポカポカした気分になった。
相変わらず、冷たい風が吹いていたというのに……
お婆さんは、遠い子供の頃のことを思い出しているようだ。
空から流れてくる懐かしい唄に、猫も耳を澄ませた。
その横顔は、失ったメインストリートを振り返るようだった。

失われた方向から流れてくる……
それは、次のような唄だった。




テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

新しい旅『もちつき大会』

楽しい祭りの輪の中に、猫とお婆さんも加わった。
寒さに負けることなく、人々は陽気だ。
獅子の面を被った芸人が脅かしに来たが、猫は泣かなかった。
巨大な臼の中で、人々は代わる代わる餅をついていた。

ついにお婆さんの番が来た。
お婆さんは威勢良く、餅をつきはじめた。
猫はお婆さんの腕の動きに合わせて、陽気に頭を振り始めた。
お婆さんを応援するように……





もちつき大会
もたついた

もたもたもちもち
もたもたもちもち

もちつき大会
もたついて

物言いついて
悪態ついた

持ち物検査
もたついて

手垢がついて
ため息ついた

もちつき大会
もたついた

もたもたあちちち
もたもたあちちち

もちつき大会
もたついて

一息ついて
悪霊ついた

もちつき大会
もちついて

もちつき大会
落ちついた






お婆さんたちの活躍によって、もちつき大会は大成功に終わった。
活躍した後に食べる餅は、格別にうまかった。
猫とお婆さんは、思い残すことがないほど腹いっぱいで……
獅子の男に帰りの地図を書いてもらった。
けれども、猫は獅子男を疑い深く睨んだ。
その横顔は、疑心によってつかれた餅のように離れなかった。

人々の賑わいを後にして、歩き出す。
地図のように進んで行くと、寂しい道に出た。
祭りの後のようだった。

「本通商店街……」
お婆さんの目に、くたびれた文字が飛び込んできた。





テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

新しい旅『夢後悔』

気がつくとお婆さんも、猫と並んで夢に落ちていた。
お婆さんも疲れていたし、やはり少し飲みすぎたのだ。
二人並んで眠りながら、二人とも夢見ながら……
けれども、見ている夢は全く違っていた。





温かい布団の
遥か彼方

誰の目にも
触れたことのない
高い塔の上

雲を見下ろしながら
背中の翼を広げて

雪の中に降下すると
どうか魔女よ
忘れないでと

寒さは息を白くして
僕はもっと白くなって

夢の塔に 別れを告げて

夢の魔女を 夢に返して

寒さは時を長くするけど
もっと長く夢の塔に
留まれば
物語には春もあったが

醒めている時の
習慣は深い

警戒心は溶けることなく

何度も優しさ
遠ざけるだけ

夢と知っていれば

もっと自由で もっと楽な
自分があったのに

嗚呼 夢の魔女よ

なぜ教えてくれなかった

なあ 夢の塔よ

もう一度 引き上げてくれないか

もう一度 呼んでくれないか






「おはようございます!」

女将の呼ぶ声で猫は、起こされた。
夢の終わりはいつも唐突だ。
それでも猫が夢見ることを止めないのは、生きている証しなのだ。
猫とお婆さんは追い出されるように、宿を後にした。

公園通りを歩いていると、賑わいの中からおいしそうな匂いが流れてくる。
猫はお婆さんの顔を、問いかけるように見上げた。
その横顔は、夢の質問箱のように疑問が詰まって見えた。
賑わいの中から、もちが一枚飛んできた。






テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

新しい旅『水入らず』

人形の笑い声から逃げるように、歩いた。
気がつけば今日もまた夜が訪れている。
たどり着いた温泉旅館で、一休みしよう。
女将は人間らしく、お婆さんと猫はとても安心した。
温かい湯の中に、冷え切った体をゆっくりと浮かべた。
猫とおばあさんは家族水入らずで……




涼しげな顔で
雪だるまみたいに
浮かんでいたね

白い顔で
たまごみたいに丸く
浮かんでいたね

ほんとは
ずっと耐えていたの
あなたは黙ってじっと

芯は強そうに見えるけど
外からは決してそれは
見えないものなのに

開始の合図があって
終わりの時は
決まっていないように

僕らはあえて
柔らかい体で
完成しないまま

僕らはみんな
届かない心を
内に秘めている

星のひとつのように
新しく輝きながら
あなたは浮かんでいたね






いつまでも、いつまでも浸かっていたい気分だった。
けれども、猫の茹で上がりそうな顔を見てお婆さんは考えを変えた。

部屋に戻ると、猫は白い布団に酩酊しながら行き着いた。
少しお酒を飲みすぎてしまったのか、もう半分夢の中にいるようだ。
夢の中で誰かとしゃべっているように、時々寝言をはく。
その横顔は、夢見る温泉たまごのようにぷっくりと膨らんでいた。
きっと楽しい夢なのだ。






新しい旅『人形の町』

人形の名前はフランソワと言って、
日本生まれ日本育ちの一人の日本人によって作られた、
一体の藁人形だった。
この町にも、昔は人々が暮らしていたのだけれど、
今では、人形だけが暮らす平和で良い町になってしまった……
フランソワは人形の町の寂しい歴史を、正しい日本語で、
お婆さんたちに、話して聞かせてくれたのだ。





ふふふふふ

フランス人形ふらついて
藁人形 笑ってる

ふふふふふ
ふふふふふ

フランス人形福笑い
藁人形 吹き出した

ふふふふふ
ふふふふふ

フランス人形フライング
藁人形 笑い飛んだ

ふふふふふ
ふふふふふ

フランス人形福引ひいた
藁人形 引き笑い

ふふふふふ ふふふふふ

フランス人形腐乱して
藁人形 泣き笑い

ふふふふふ






ふふふふふ……  ふふふふふ……

フランソワは悲しそうに笑いながら、
けれども急に目つきが険しくなった。

「おまえたちのせいだ!」

藁人形はメラメラと燃えながら、お婆さんに襲い掛かった。
猫は藁人形につばを吐きつけながら、鋭い爪で足払いを浴びせた。
人形は大の字になって倒れたまま、メラメラ燃えていた。

お婆さんに抱きかかえられ、人形の町を後にしながら、
猫は頻りに振り返った。
その横顔は、暴かれたカラクリ人形のように憂いに満ちていた。
猫は時々、フランソワのことを思い出して手を合わせる。

二人の旅は続いた。
再びお婆さんと、水入らずで……





テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

新しい旅『訪れたバス』

踊り疲れるまで踊り続けた後で、瞬時に夜が訪れた。
落葉の中に固まっていた時間が、一気に溶けたようだった。
ようやく原点を探し当てたように滑り込んだバスは、猫たちの前に、
停止した瞬間ドアを開くと、深いため息を吐いた。

「待たせてわるかったなー … …」

おばあさんの耳に、その音は好意的に響いた。
猫はステップを乗り越え、おばあさんが後に続いた。





ただ訪れたバスに
僕らは乗り込んだ

行く先は知らず
ただ新しい場所に

駆り立てられるままに
僕らは手を取って

揺れる想いを
そのまま乗せて

行く宛ては持たず
ただ新しい旅を


古びた時を置いていく

曇った硝子の向こうに
新しい道が見えている


夜を引き離しながら
時の静寂を揺らしながら
訪れたものたちを運ぶ


昨日の喜劇は
ここに

この空白のバスに
置いていく

ここに僕を
置いていく


新しい夢をみるために


僕らは乗り込んだ

ただ訪れたバスに






猫とおばあさんだけを乗せてバスは進む。
眩しく輝く硝子のビルを過ぎた。
寂しく静まり返った湖を過ぎた。
どこにも止まらず、誰も拾わずに……
猫はお婆さんの膝の上で、眠っていた。
その横顔は、永遠に訪れない終点のように揺れていた。

「次は、終点、人形の町……」









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junsora(望光憂輔)

Author:junsora(望光憂輔)

おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
たいした意味などありゃしない


旅の途中の紙くずたち
今日も散らばって行こう
いつも破り捨てられても

猫と婆とそんな横顔はリンクフリー
「喜多さん、いいとこばっかじゃねえか」

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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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