小さな贈り物
2006-12-24 Sun 21:26
改札を抜けると、そこは改札の外だった。
多少様子が違うような気もするが、少し改装工事でもあったのか……
いつものように階段を上り、いつもの街を歩き出す。
けれども、そこは見知らぬ街だった。

見知らぬ道を歩くうちに日もすっかり暮れて、足も疲れ始めた頃……
見知らぬ街の見知らぬ街角で、おばあさんはつまずいた。
大きな箱の中には小さな猫がいた。
傷つき震えながら、じっとおばあさんの方を見つめていた。





全く何が幸いするでしょう
あなたの飲んだ苦味だけが
吐き出せる言葉があるでしょう

幸いしてほしいのです
幸いしてほしいよね

あなたの歩んだ道だけが
示せる方向があるでしょう

狭いから届いたり
弱いから解ったり
小さいからくぐれたり

幸いしてほしいのです
幸いしてほしいよね

間違うことで掴めたり
手放すことで手にしたり
落ちることで羽ばたけたり
遅れることでたどり着いたり

あなたを通り過ぎた
小さな物語だけが 
紡げる言葉があるでしょう

だから何が幸いするでしょう

せめて幸いしてほしいのです
幸いしてほしいよね

壊れることで直ったり
落とすことで拾われたり
迷うことで行き着いたり
疑うことで信じられたり

傷つくほど愛せたり
失うほど満たされたり
震えるほど温まったり

いつか何かがきっと
幸いするでしょう

幸いしてほしいよね





街に雪が降りてきた。
おばあさんは猫を抱きかかえると、元気に歩き出した。
猫のために、新しい元気を創り出したのかもしれない。
それから随分後になってから、おばあさんは気がついたものだ。
あの時、自分が降りる駅を間違えてしまったことに……
そして、それが本当に幸運だったということにも。
小さな猫は、おばあさんの胸の中で眠っていた。
その横顔は、小さな居場所を見つけた子供のように夢を見ていた。








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