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新しい旅『落葉のダンス』

このバス停は幻なのか……
いつまで待ってもバスは来ない。
ただ待っている間に時は過ぎ、猫とおばあさんは歳をとっていく。

どこからともなく白い風が吹きつけて、落葉を寄せ集めた。
それは、意思を持ったまとまりとして渦巻きながらダンスチームを作ると、
誰かが置忘れたダイニングチェアーの上で猫を被っていた生き物も、
軽やかな身のこなしで飛び下り、その輪に加わった。
猫は、風の中で回転を始めた。





踊れ踊れ
落葉の中に
広がって

冬の視線を浴びながら
陽気なステップ踏んづけて

踊れ踊れ
落葉を散らし
行き場をなくし

息あがる激しさで
悪意と失笑を振り払い

踊れ踊れ
落葉のように
雪のように

いまきみも

真っ白で
待ちきれぬものを
忘れるように

踊れ踊れ
落葉を舞わせ
涙を降らせ

踊れ踊れ
落葉となって
緩やかに


戻らないもののため

この瞬間に想いを乗せて


踊れ踊れ


もう一度

落葉のダンスを






いつしかおばあさんも、猫と一緒なって踊っていた。
まるでその空間だけ、地球上の問題から浮き上がって見える。
踊っている間に、おばあさんは見る見る若返っていくようだ。
道行く人の寒い視線を浴びて、おばあさんは10歳若返り、
猫はその10倍目を丸くした。
その横顔は、落ち続ける落ち葉のように記憶を留めている。
けれども、ようやく、
バスが訪れた。








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テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

「年越詩祭」

「ねえねえ、お婆さん……」
「もうすぐ年越詩祭が始まるみたいだよ」

「わたしは忙しいからねえ」

「ねえねえ、お婆さん……」
「お婆さんは、年中暇じゃないか!」

「華やいだ場所は苦手でねえ」

「ねえねえ、お婆さん……」
「僕がいるから大丈夫だよ!」

「何の話だったかねえ」

「ねえねえ、お婆さん……」
「もうすぐ年越詩祭が始まるみたいだよ」





「年越詩祭」
http://fushyosyonen.blog66.fc2.com/




テーマ :
ジャンル : 小説・文学

小さな贈り物

改札を抜けると、そこは改札の外だった。
多少様子が違うような気もするが、少し改装工事でもあったのか……
いつものように階段を上り、いつもの街を歩き出す。
けれども、そこは見知らぬ街だった。

見知らぬ道を歩くうちに日もすっかり暮れて、足も疲れ始めた頃……
見知らぬ街の見知らぬ街角で、おばあさんはつまずいた。
大きな箱の中には小さな猫がいた。
傷つき震えながら、じっとおばあさんの方を見つめていた。





全く何が幸いするでしょう
あなたの飲んだ苦味だけが
吐き出せる言葉があるでしょう

幸いしてほしいのです
幸いしてほしいよね

あなたの歩んだ道だけが
示せる方向があるでしょう

狭いから届いたり
弱いから解ったり
小さいからくぐれたり

幸いしてほしいのです
幸いしてほしいよね

間違うことで掴めたり
手放すことで手にしたり
落ちることで羽ばたけたり
遅れることでたどり着いたり

あなたを通り過ぎた
小さな物語だけが 
紡げる言葉があるでしょう

だから何が幸いするでしょう

せめて幸いしてほしいのです
幸いしてほしいよね

壊れることで直ったり
落とすことで拾われたり
迷うことで行き着いたり
疑うことで信じられたり

傷つくほど愛せたり
失うほど満たされたり
震えるほど温まったり

いつか何かがきっと
幸いするでしょう

幸いしてほしいよね





街に雪が降りてきた。
おばあさんは猫を抱きかかえると、元気に歩き出した。
猫のために、新しい元気を創り出したのかもしれない。
それから随分後になってから、おばあさんは気がついたものだ。
あの時、自分が降りる駅を間違えてしまったことに……
そして、それが本当に幸運だったということにも。
小さな猫は、おばあさんの胸の中で眠っていた。
その横顔は、小さな居場所を見つけた子供のように夢を見ていた。







テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

ホットミルク

ミルクを鍋に空けて、火にかけた。
ソファーに腰掛けて、携帯を開けた。
お気に入りサイトがズラリと開けた。
『そんな横顔フリーキック』を開くと、猫が近寄ってきた。
おばあさんの横から覗き込むように……
けれども、猫はお気に召さないのかベッドの方に帰っていった。





温めてるよ

乾いた土の上で
真っ白い冬の底で
合わせた手の中で

温めてるよ

小さなアイデア
小さな好き
小さな望み

大事に大事に
誰にも見えないように

ゆっくりと
陽だまりの
猫のように

温めてるよ

破れそうな胸の奥で
破れかけた鞄の底で
破れかぶれの街の地下で

温めてるよ

小さな常識
小さな絶望
小さな裏切

冷酷な掟たちから

必死に必死に
いつも守りながら


ゆっくりと
バス停の
おばあさんのように

僕はまだ
温めてるよ

ゆっくりゆっくり

温めてることも
忘れるくらい


大事に大事に

自分で
壊さないように


まだ僕は
温めてるよ


優しく優しく


いつかきみを
温めるために






おばあさんは温めている何かを思い出して、携帯を閉じた。
重たい腰を上げて、ミルクの鍋に近づいた。
鍋を下ろして、カップに注ぐと勇気のような湯気が昇った。
猫は誘われて、やってくるだろうか?

猫はいまは、ソファーの上にいた。
おばあさんの座っていた場所を、温かそうに占領している。
その横顔は、冬の夢を温めるミルクのように甘かった。







テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

アイスミルク

息は雪のように白く、道の上にも12月の波が押し寄せていた。
おばあさんは家に戻ると、手袋をはずした。
ストーブをつけて、かじかんだ手を温めた。
落ち着いたところで冷蔵庫を開けると、冷たい冬があふれ出てきた。
それはベッドの上で寝ている猫にまで届いた。





きみの持っている時間を
知らないわけでは
なかったよ

きみを守りたくて
そこに入れておいたんだ

半分は
自分のためでも
あったけれど

寒かったね
ずっと閉じ込められて

真っ暗で
どこにも
逃げ場がなくて

きみの待っている時間を
知らないわけでは
なかったよ

一日でも長く
きみをこの世界に
留めておきたくて

みんなが
そうするように

安全な囲いに
入れておいたんだ

ずっとひとりで
冷たい暗闇の中
ずっと震えていたんだね

差し迫っているのに

きみはひとつの声も
上げられずに
寒かったね

寒かったね

もう大丈夫だよ






中からミルクを取り出した。
けれども、それはもう期限切れだった。

「温めれば、大丈夫だね……」

同意を求めた。
猫は、ベッドの上で少し震えながらあくびをした。
その横顔は、冬の搾り出したミルクのようだった。








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スプーンおばあさん

「曲がれー、曲がれー!」

おばあさんは、魔女が呪いをかけるように語りかけた。
超能力おばあさんとして、テレビに出るつもりなのだ。
猫は、呆れ顔でおばあさんの恐ろしい顔を見ていた。
舌打ちをすると、おばあさんは次のスプーンを手に取った。





おばあさんのスプーンは
一つじゃなくて
石の数ほど
散らばってる

銀のやら金のやら
長いのやら短いのやら
丸いのやら尖ったのやら
錆びたのやら光ったのやら

おばあさんのスプーンは
とてもじゃなくて
梨の数ほど
実ってる

勢揃いのやら不揃いのやら
真っ直ぐなのやらカーブなのやら
合ってるのやら間違ってるのやら
まとまったのやらはみ出したのやら

おばあさんのスプーンは
理屈じゃなくて
虫の情けほど
溢れてる

大ベテランやら新人やら
何だったのやら噛んだのやら
あきらめたのやら輝いたのやら
失くしたのやら見つかったのやら

何やらかんやら
言うてるように
統一感がない奴ばかり

みんなそれぞれバラバラ
みんなみんな好き勝手に

曲がりなりにも
個性豊かな顔ぶれで

それはスプーンのように
世界を救ってみせるのさ






おばあさんは次々とスプーンを替え、それは小さな挑戦ではあったけれど、おばあさんの有り余る熱意はまだ醒めることを知らないのだった。
けれども、猫は思った。
やり方を変えるべきなんだと……。

おばあさんは、執念深い魔女の目で反応のない敵を溶かさんばかりに見た。
その時、猫はおばあさんの腰が少しだけ伸びたのを見た。
その横顔は、一粒の老いを掬い取ったスプーンのように驚いていた。







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ジャンル : 小説・文学

未来マネー

会計が終わると、店員は店員のように微笑んだ。

「2.231円になります!」

おばあさんは、巾着袋の中から財布を取り出した。
けれども、出てきたのは猫ビスケットだった。
シルバーカーの中から、猫がひょっこり顔を出す。





もう何も渡さない

わずらわしいやりとりも
危なっかしい手渡しも
もう何も必要ない

もうきみに渡さない

一枚一枚数えたり
一枚足りぬと嘆いたり
もう何も間違わない

落とすこともなく
崩すこともなく

ただ人が
流れていく

もう
きみの前には
止まらない

とりとめもない掛け合いも
気のおけないやりとりも

もう何も
触れ合わない

きみの目にも留まらない

手垢まみれになって
渡り続けた紙切れは

いまはもう
歩行者ランプの点滅のように

紙くずにする形さえ
不確かになって

お金なんて幻なんだよ

そうだ
おばあさんの言ってた通り

幻は幻らしく浮かべばいい

メキシコの空を出入りする
UFOみたいに





「ごめんなさい。財布を忘れてしまって……」
あたふたするおばあさんを尻目に、猫はカウンターに飛び乗った。
キャット・ハンド・プレートの上に、ちょこんと手を乗せる。

「キャット・マネーですね。ありがとうございます!」

店員が微笑むと、猫はシルバーカーに飛び下りた。
その横顔は、電気仕掛けの猫のように誇らしげに輝いてみえた。










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ジャンル : 小説・文学

森の唄

「うさぎさん、今日はひとりなの?」

うさぎの森も、昔のような緑ではなくなった。
うさぎの数も減り、昔の歌声は聞こえなくなった。

「ひとりは寂しいでしょう?」

猫が質問を続けると、うさぎは怒ったように見返した。





僕は森
人はきく
木のこと 枝のこと

でも僕
海の話もしたい
波のこと 魚のこと

僕は森
人はきく
雨の音 土の音

でも僕
海のことがききたい
波の音 砂の音

僕は森
人はきく
緑のこと うさぎのこと

でも僕
海の話もしたい
青いこと 広いこと

僕は森の猫
うさぎの森で育ち
森の子守唄で眠る

だから
僕にもきいてよ
僕の知らないこと

だからたまには
聴かせてよ
僕の知れないこと

森の向こうの
世界の唄を






猫は、空気を読んで話を変えてみた。

「最近は月には帰らないの?」

けれども、うさぎは無言だった。

「ねえ、亀に負けたんだって?」

猫は、少し冗談を言ってみた。
うさぎは、とうとうそっぽを向いて逃げて行ってしまった。
猫は茫然と後姿を見送っている。
その横顔は、森を追われた精霊のように寂しそうだった。








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ジャンル : 小説・文学

月とかくれんぼ

冬を急ぐように、青い闇の中を雲が過ぎた。

「どこに行ったのかね……」

いつもの場所に猫はいなかった。
ベッドの下を、本棚の上を、月の光の中を……
猫のいそうな色んな場所。
おばあさんは探してみたけど、見つからなかった。
けれども、月が雲の中に逃げ込んだ。




日が暮れる頃
僕らはまだまだ
隠れてる

なるべく遠くまで
離れてひっそり
隠れ込んだ

小さな勇気を
少しだけ振り絞って
高いところにも登ってみた

きみに見つかり
僕は泳いだ

お日様が隠れても
僕らはまだまだ
隠れてる

なるべく遠くまで
離れる振りして
こっそり隠れた

小さな体を
より小さく折り畳んで
狭い隙間にも入り込んだ

きみに呼ばれて
僕は唇を噛んだ

お日様はぐるぐる回って
みんなもみるみる
大きくなって

隠れる場所も
広く遠く

哀しいほど自由な
バラバラの銀河に
流れるように散った


見え隠れする遠い向日葵の下で
張り合いのない隠れ家の中で
変わり果てた姿を


きみは見つけてはくれないね

もう呼んではくれないね


だからそう


僕はそろそろ
出て行こうと思うんだ


自分から見つけるために






猫のことを気にかけながら、南瓜スープを火にかけた。
テーブルの上のみかんを、ひとりむき始めた。
その内、どこかからか出てくるだろう。

秋を振り返るように、雲の中から月が顔を出した。
けれども、猫はまだ出てこなかった。
その横顔は、おばあさんには見えなかった。











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junsora(望光憂輔)

Author:junsora(望光憂輔)

おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
たいした意味などありゃしない


旅の途中の紙くずたち
今日も散らばって行こう
いつも破り捨てられても

猫と婆とそんな横顔はリンクフリー
「喜多さん、いいとこばっかじゃねえか」

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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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