心 の 隙 間 か ら 出 て お い で
他人の自分
2006-11-10 Fri 18:21
「出て来いよー!」
猫は、ガラスの向こうの猫と話していた。
睨みつけ、引っかき、言いがかりをつけた。

「こっちから行くぞ!」
けれども、猫が邪魔をするので猫は入っていけないのだった。
油断させようとして下がってみるが、すべて読まれいているのだ。




真夏のように
鮮明な鏡は
いらない

真昼の太陽のように
理想の未来のように

鮮明な光
真実を映し出す鏡

もう欲しくない

いまは硝子に映る
ぼんやりとした
自分がちょうどいい

路上に静止する
カーウインドウに
映り込む自分

キラキラと
きらびやかな衣装を
飾った

すれ違う
ショーウインドウに
現れる

薄っすらとした自分

ほんのりと
ぼやけた自分

ちょうど
他人の目に映るくらいの
曖昧な自分でいい

真っ白な真実を
真っ直ぐに
投げ返すような

正確なだけの
鏡なんていらない

ただぼんやりと
ただふんわりと

新月が照らす水辺に浮かびたい

優しくやんわりと





等身大の猫と、疲れるまで遊んでやった。
突然、ガラスの中に大仏頭が現れたので後ろにのけぞった。
おばあさん……
いつもと違う頭をしたおばあさんが立っていた。
猫は不思議そうに目を丸めていた。
その横顔は、鏡に映り込んだ他人のようによそよそしかった。







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