心 の 隙 間 か ら 出 て お い で
もしも私が私なら
2006-11-07 Tue 19:38
「今日は休みだったかな?」
おばあさんの家のカレンダーは、まだ96年のままだった。
随分のんびりしているものだ。
猫は、おばあさんを見ながら考えた。

猫は毎日忙しいけれど、おばあさんは仕事もないし、毎日休みなんだ。
おばあさんはいいなあ……
それで今日は普通の日だ。
猫の勘は正しいものだ。




もしも私が猫ならば
私が猫だったらとは思わない

もしも私があなただったら
あなただったらとは思わない

どう転んでも
私は私だから
もしも私が私だったらとは思わない

きっと

私があなただったらと望むほどに
あなたはあなたであることに満足はしないのだろう

決して

私が私であることに満足しないように

もしも私が鳥ならば
私が鳥だったらとは思わない

もしも今日が休みだったら
今日が休みだったらとは思わない

もしもここが地球だったら
ここが地球だったらとは思わない

もしも私が私でなかったら
私は別の何かだったのだろうか

もしもどこかで別の道を選べば
私は別の私に変わっただろうか

もしももしもと考えても

もしももしもと思わなくても

いまの私はこの私

いまここにいるこれが





「そうだ。今日は新しい祝日…
 感謝の日だったね」
おばあさんの言葉をきいて、猫は目を丸くした。
その横顔は、ハンガーから滑り落ちた秋のようにおどけていた。







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