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冬のインク

3連目を書こうとしたところで、ペンは進まなくなった。

「これから盛り上がるとこなのに……」

おばあさんの唄が盛り上がったことなどあるのかな?
猫は冷たい目で、おばあさんの頭の方を見た。
おばあさんは、ペン立から新しいペンをとった。





余力があるのに
なぜ出てこないの

まだ夜のように
黒くたっぷりと
残っているのに

線は引けても
文字にならない

空ではないのに
なぜ出てこないの

まだ空のように
黒く濃く
続いているのに

円は引けても
文字にならない

強く押し付ければ
凶器となって
傷つけてしまうだろう

想いはあるけど
まだきみは
回転しないの

希望はいっぱい
残っているのに
飛び立てないの

広い世界には
まだ
零れ出れない

だから
この夜のように

世界の内側に
冷たく滲んでいく

小さな胸から

もう溢れそう






「寒くなると、インクも出て来なくなるね」

ソファーの上で丸まる猫を見ながら呟いた。
どうやら次のペンも、唄い出さないようだ。
おばあさんは、ゴミ箱に不機嫌なロケットを投げ入れた。

冬のゴールに揺れる無回転ボールのように飛んで落ちた。
猫は、その軌道に首を振った。
その横顔は、一瞬の跳躍と物語の結末と共に沈んでいった。











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テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

夕暮れの風

風が何か言いたげに吹きつけた。
まだ5時だというのに、夕焼けはすっかり薄れてしまっていた。
家路を急ぐ人々に混じって、猫も歩いていた。
いたる所で、別れの挨拶を交わす声がする。

「さよなら。また明日」

今日のすべてが、空へ吸い込まれていくようだった。





夕暮れ時に吹く風は
いつもちょっと冷たくて

それはなぜと
不思議がるうちに
すぐに夜が押し寄せて
想いを塗り潰してしまう

去りゆくきみを見送る道は
いつも決まって同じように
冷たい風が吹き抜ける

夕暮れ時に見る空は
いつも少し消えそうで

それがなぜか
問いかけるうちに
すぐに時が押し寄せて
想いを連れ去ってしまう

消えゆくきみを見送る空は
いつも決まって同じように
赤い温もりを奪っていく

繰り返される冷たさは
白い風を運ぶ
未知なる誕生のために

赤から黒へと
時を急がせる

止められない夕暮れは
いつも冷たく赤く
奪っていく

ひとつの終わりに

とどまれない想いを






さよならと夕焼けと猫の唄を吸い込んで、空は白くなった。
白さの中に最初に描かれた丸い形を、猫は見た。
それは月だった。
もうすぐ夜の青さの中で輝きを増すだろう。

風が昼間の方向から猫を追いかけるように吹きつけると、猫はもう一度オレンジの光を思い出した。
その横顔は、月の見つめる風の中で薄っすらと白く見えた。







テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

コロコロ

みかんはおばあさんの爪先によって正体を現した。
それはみかんのみだ。
口に放り込むとおばあさんは顔をしかめた。

「うひゃー、すっぱい!」

おばあさんは、二つ目のみかんに期待を込めて爪を立てた。
けれども、おばあさんが手を滑らせると、みかんはコロコロと転がった。
辺り一帯に運動会の匂いが充満していたけれど、猫はまだベッドの上で寝転がったままだった。





逃げるように転がった
少しでも遠くに行こうと

コロコロ コロコロ

転がっていく間に
余計なものは
削ぎ落とされて

だんだん小さくなっていく

想いのかけ方で
方向は変わる

いつ頃からかは忘れてしまった

いつも誰かとぶつかりながら
落ち着く場所はないけれど
どこまでも転げ落ちるだけ

駆けるように転がった
誰よりも先に行こうと

コロコロ コロコロ

転がっていく間に
余分なものが
付着して

だんだん重くなっていく

言葉のかけ方で
方向は変わる

いつ頃からだろうか

鈍感な人の隙間を縫って
共感だけを探し始めたのは

コロコロ こころ
こころ コロコロ

いつも口をあけたまま
いつも誰かとぶつかりながら
落ち着く先は見当たらない

だけど時々
競うことに疲れた時は
一人離れて転がっていこう

オレンジに染まる坂の上を

ゆっくりと昔のように





コロコロ転げ落ちて逃亡した果実を捕まえた。
拾い上げたみかんからも、納得のいく甘さは得られなかった。
そして、おばあさんは缶詰を開けたのだ。

音がはじけると、すぐさま猫が転がり込んでいた。
その横顔は、躍動するどんぐりのように親しげだった。








テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

小さな幸せ 

おばあさんの手からかっさらった。
ビスケットは猫の口の中で幸せな音を立てた。
猫は顔をくしゃくしゃにしながら、目を輝かせた。
おばあさんの元に戻ってくると、手からさらっていった。
空っぽになった、おばあさんの手はたくさんの皺が広がっている。




幸せは
小さな小さな旅人

とても小さな旅人は
長く落ち着くことが苦手

どんなに大事に迎えても
いつも
出発の準備をしている

小さな旅人は
行き過ぎることばかり

幸せは
気まぐれな小人

秋空ほどに
気まぐれな小人は
長く留まることが苦手

どんな笑顔で迎えても
いつも
逃げ出す準備をしている

気まぐれな小人は
行き届くには小さすぎる

幸せは
いつも風のように

ふんわり甘く
どこでも形なく
早足に

駆け抜けて
長くは続かない

新しい幸せに続くために

彼はまた
歩き出す

誰もに
惜しまれながら

彼はまた
旅に出る





猫は戻ってくると、おばあさんの空っぽの手に小さな手を乗せた。
おばあさんはそっと猫の手を握り返すと、優しく額を撫でた。
「もうないの?」
猫はいつもそんな顔をする。
おいしいものがなくなった後では……
その横顔は、幸福に包まれた不幸のように少しだけ寂しそうだった。








テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

この道の先

獣道が猫の脚力を奪っていた。
幻の村を抜けると、月が湖を照らし出した。
猫は吸い寄せられるように近づいていく。
けれども、月から飛び出してきた黒い鳥の群れが猫を阻んだ。
猫は駆け出した。
鳥は黒く、月を完全に覆っていた。




この道の先に
待ち受ける場所は
蜃気楼の村

どこまで続くのだ
どこまで進むのだ
勘だけを頼りに

この道を下り切った先に
待ち受ける場所は
水辺の楽園

どこまで下りるのだ
底まで沈むのか
覚悟も決めずに

この道を上り切った先に
待ち受ける場所は
綿菓子で出来た天国

どこまで上るのだ
どこで休めるのだ
傷ついた足を

この道に迷い込んで
遥か先で訪れる
風景は

地図に漏れた街
話に聞いたユートピア
長針の止まった世界

照らし出される
忘れ去られた現実

誰が道をつけたのだろう
誰が道に続いたのだろう

どれほどの人が
歩き過ぎたのだろう

誰かと同じ希望を持ち
誰かと同じ不安を持ち

私と同じような想いで
足跡を振り返りながら
進んで行ったのだろう

この道を突き詰めた
遥か先で待っているのは

現実とかけ離れた
心地良い場所だろうか

現実の中で
心落ち着ける場所だろうか

心の照らす細い道

見えているのは

僅か先の明かり





見慣れたウサギの森が猫を囲っていた。
月も戻ってきた。
森を抜けて猫は戻ってきた。
明かりが見えてきた。お婆さんの家だった。
昨日と同じように猫は家にたどり着くとドアを叩いた。
その横顔は、枕を探す睡蓮のように眠そうだった。







テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

足音

木枯らしが街を震わせた。
猫は、大きなタイヤの中に逃げ込んで耳だけを出していた。
温泉で疲れを癒す旅人のように見えた。
そうしながら猫は、人々の足音を聴いていた。
夕暮れの足音は朝の足音より、少しだけ柔らかい。
それから猫は、冬の足音をきいた。




風が枯葉を散らせば
遠くからきこえてくる
白い足音が

微かな足音を
まだ憶えている

一歩ずつ迫ってくる
足音のリズム
僕にはわかる
明日の天気

空を見なくても
わかってしまう

恐る恐る
出迎える準備を
始めよう

夕日が風に溶け込めば
近づいてくる
お婆さんの足音が

微かな足音を
もう憶えている

一歩ずつ近づいてくる
足音のメロディー
僕にはわかる
お婆さんの陽気

顔を見なくても
わかってしまう

踊る踊る
出迎えのタップを
踏もう

風が落葉を運べば
遠くから流れてくる
白い空気が

夕日が街を包めば
遠くから戻ってくる
あの日の足音が

まだ少し照れながらも
再会の鼓動は高まって

やがて唄うように囁く

やあ おかえりと





足音は途絶えることなく続いていた。
けれども夕暮れは薄れていく。
猫を包んだタイヤのように、もうすぐ黒くなるだろう。
誰の足音を待っているのだろうか?
風が弱まると、猫はタイヤから少し首を出した。
その横顔は、夕日に照らされオレンジのように丸く光っていた。






テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

他人の自分

「出て来いよー!」
猫は、ガラスの向こうの猫と話していた。
睨みつけ、引っかき、言いがかりをつけた。

「こっちから行くぞ!」
けれども、猫が邪魔をするので猫は入っていけないのだった。
油断させようとして下がってみるが、すべて読まれいているのだ。




真夏のように
鮮明な鏡は
いらない

真昼の太陽のように
理想の未来のように

鮮明な光
真実を映し出す鏡

もう欲しくない

いまは硝子に映る
ぼんやりとした
自分がちょうどいい

路上に静止する
カーウインドウに
映り込む自分

キラキラと
きらびやかな衣装を
飾った

すれ違う
ショーウインドウに
現れる

薄っすらとした自分

ほんのりと
ぼやけた自分

ちょうど
他人の目に映るくらいの
曖昧な自分でいい

真っ白な真実を
真っ直ぐに
投げ返すような

正確なだけの
鏡なんていらない

ただぼんやりと
ただふんわりと

新月が照らす水辺に浮かびたい

優しくやんわりと





等身大の猫と、疲れるまで遊んでやった。
突然、ガラスの中に大仏頭が現れたので後ろにのけぞった。
おばあさん……
いつもと違う頭をしたおばあさんが立っていた。
猫は不思議そうに目を丸めていた。
その横顔は、鏡に映り込んだ他人のようによそよそしかった。






テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

もしも私が私なら

「今日は休みだったかな?」
おばあさんの家のカレンダーは、まだ96年のままだった。
随分のんびりしているものだ。
猫は、おばあさんを見ながら考えた。

猫は毎日忙しいけれど、おばあさんは仕事もないし、毎日休みなんだ。
おばあさんはいいなあ……
それで今日は普通の日だ。
猫の勘は正しいものだ。




もしも私が猫ならば
私が猫だったらとは思わない

もしも私があなただったら
あなただったらとは思わない

どう転んでも
私は私だから
もしも私が私だったらとは思わない

きっと

私があなただったらと望むほどに
あなたはあなたであることに満足はしないのだろう

決して

私が私であることに満足しないように

もしも私が鳥ならば
私が鳥だったらとは思わない

もしも今日が休みだったら
今日が休みだったらとは思わない

もしもここが地球だったら
ここが地球だったらとは思わない

もしも私が私でなかったら
私は別の何かだったのだろうか

もしもどこかで別の道を選べば
私は別の私に変わっただろうか

もしももしもと考えても

もしももしもと思わなくても

いまの私はこの私

いまここにいるこれが





「そうだ。今日は新しい祝日…
 感謝の日だったね」
おばあさんの言葉をきいて、猫は目を丸くした。
その横顔は、ハンガーから滑り落ちた秋のようにおどけていた。






テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

面白い場所

「面白いテレビはないかねえ…」
おばあさんは、リモコンを押しながらテレビに攻撃を加えていた。
チャンネルは変わるけれど、おばあさんは笑わなかった。
そればかりか、曇っていくように思われた。
テレビの中で、面白いことが起こるはずがない……
猫はあくびをしながら、窓から飛び出した。
面白いことは、いつも窓の外にあるのだ。




手を叩いて
笑うとかじゃなくて

お腹を抱えて
笑うとかでもないけど

それならどんなと
訊かれても
少し困るけれど

面白い場所は
思ってた以上に
あるみたい

見つけることは
普通に難しくて

面白い場所が
歩いてくることはないから

僕は毎日
毎日が
大変なんだ

人一人
通れないくらいの
壁と壁の間を

僕は身を縮めて
リスのように
すり抜けて行く

人が見上げるほど
高い壁も
僕は猫らしく
乗り越えていく

面白い場所を
見逃さないことは
普通に難しい

だから僕は
いつも目を皿のように飛ばしたり
ビー玉みたいに丸めながら

未知の中を歩き回っているんだ

きみにとっては

何も存在しない空き地か
あまりにありふれた地上

だけど僕が面白い場所は
案外無数にあるみたい

冒険の道は僕の中を

荒い岩石で
鋭い刃で
傷つけもするけど

面白い場所は
傷ついた先で
ようやく待っているんだ

小さな額に
いっぱい詰め込んで
ようやく持ち帰る

それでゆっくり夢をみる

面白い猫として





猫が小さな冒険から帰ってきた。
おばあさんは、テレビを消して日記をつけていた。
面白くない出来事を面白おかしく……
猫は、もうベッドの中で面白い夢を見ていた。
その横顔は、未開封の土産物のように楽しそうだった。





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ジャンル : 小説・文学

甘い選択

おばあさんの財布の中には、500円しかなかった。
うまい棒に金平糖に、チョトスにショパンに、チェルシーにミルキーに。
猫ビスケットにポテルカに……
数ある有力な菓子の中から、おやつを選んでいる。
おばあさんは、かなり真剣な顔つきだ。

「そんなに真剣になることがあるだろうか…」
猫はシルバーカーの中から、おばあさんの顔を見て首をかしげた。



限られたものの中で
迷いながら選んだ

大きいのを1つにするか
小さいのを3つにするか

甘いものばかりでは飽きるし
すぐ溶けてしまうものはダメだし

必ず心残りはあるけれど
いまの自分にベストのものを

限られたものの中で
選ぶから迷った

大好きなものを1つにするか
2番目に好きなものを集めるか

正解なんてないのだし
いまの自分が好きなように

失敗することはあるけれど
悩んだ挙句決めたものだから

限られた世界で
選んだものは宝物

足りないものは人にもらおう
素敵なものは人にもあげよう

望みすぎたら削り取り
行き詰ったらやり直し

あれもいいなこれもいいな
あれこれ考え時間がすぎる

いまの自分に必要な
自分だけの組み合わせ

人にはわからない
自分だけのお気に入り





買い物カゴの中は出たり入ったり、厳しい選択が続けられた。
おばあさんは猫ビスケットを売り場に戻すと、代わりにチョコビスケットを手にした。
突然、猫の顔つきが変わった。
その横顔は、鬼せんべいのように赤く燃え始めていた。





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junsora(望光憂輔)

Author:junsora(望光憂輔)

おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
たいした意味などありゃしない


旅の途中の紙くずたち
今日も散らばって行こう
いつも破り捨てられても

猫と婆とそんな横顔はリンクフリー
「喜多さん、いいとこばっかじゃねえか」

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『折句ストレート』

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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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