スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

小さな疑問

クルクルとおばあさんが指を回す。
クルクルと、とんぼが首を回して「何か用か」ときいた。
おばあさんが手を伸ばすと、「そういうことか」ととんぼが飛び立った。

一瞬遅れて猫が後を追いかける。
けれどもあれは幻の12色とんぼ…
夜の中でもダンプカーのように点滅する。
速い 速い まるで速い 虫の一生よりも速い…




小さな秋の中に小さな虫は
小さな疑問でないていた

どう思っているんだろう

虫のようにあしらって
虫のように扱うなんて

小さい奴だな

僕らは
葉の一枚一枚
夜露の一粒一粒を
大きく受け止めるよ

僕らが虫だからといって

虫のように思うなんて

虫のように追い払い
虫のように踏みつけて

小さいからといって
小さく扱うなんてひどい奴だな

小雨の一滴が
ささやかなそよ風が
僕らを揺らすよ

小さいからといって
小さく思うなんて小さい奴だな

僕らの王国を知らないくせに
大きいものしか相手にしないなんて

人間が小さいな

目立つものしかみえないなんて
人の方が小さいな

人の浮かばない空間
小さなベルベットの翼
夜風に乗って光る瞳

すぐに消えてしまうから

器用な手の中に
閉じ込めて慰めようなんて

余計なお世話だな

どこまでも どこまでも

空の模様が同じに見えるから

花の横顔が同じに見えるから

飛んでいく唄は見失ってしまうよ

そうだ

見つけたかったら

小さくなってごらんよ





「おばあさん、ダメだったよ…」
打ちのめされ、消沈して猫が帰ってきた。
その横顔は、秋の虫のひそひそ話ほどに萎んでいた。
おばあさんは、両手をぴしゃりと音を立てて合わせた。
蚊と呼ばれた生き物が地に落ちた。






スポンサーサイト

テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

静寂の月曜日

猫は草むらで息を潜めていた。
昨日は誰もいなかったグラウンドで授業が始まった。
チャンバラの授業だ。
秋風にそよぐ草のささやきの向こうでプラスチックな金属音が聞こえてくる。
遠い戦国時代のことを思わせる……
けれども、猫は歴史を超越した存在だった。
草むらの中から猫は飛び出した。




何度も巡ってきたけれど
ずっと苦手なままだった

昨日はまだそこにあり
明日ははるか先にある

だから今日が重いけど
自分で跳ね出していかなければ

顔を背けるほど
月曜の時間は長くなるから

近づいてくる
あいつの気配だけで
いつもいつも嫌になってた

純粋な時間は短くて
捕らわれた時が続く

だから今日が暗いけど
自分で照らしていかなければ

長く黒い闇の中
そろそろ自分で
星を探し始めよう

顔を伏せていると
月曜の時間は増えていくから

過ぎ去る昨日は惜しいのに
留まる今日は圧し掛かる

苦手なものは
自分の手で切り裂いて

過ぎ去るだけを望むなら

包み込まれてしまうだろう

静寂響く月曜の時間に





昨日は貸切のグラウンド。
いま猫は戦の狭間を、刀を抜かない侍のように駆け抜けた。
月曜のグラウンドに長居は無用だ……
無抵抗な先生が、斬られ役となって寝そべっている。
猫は構わず踏みつけて戦場を後にした。
その横顔は、憎まれる月曜日のように白かった。





テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

継続は何処から

パラパラとめくってはまたおばあさんは爆笑している。
猫は本棚の上から見下ろすとこっそりと本の中を盗み見た。
なにやらそれは懐かしげな楽しげな本のようだった。
「やっぱりこんなこともあるから日記はつけておくもんだね…」
おばあさんは本を閉じると、自分の日記帳を開いた。



続けることは難しい
ひび割れる腹筋を
日に沈んだ夜勤を

始めることは偶然か
自分の意志か

払い続けることは難しい
先の見えないローンを
果てしない憂鬱を

続けることは必然か
自分の意志か

叫び続けることは難しい
入口に残された子犬のように
出口を見失った迷路の真中で

続けることは目的か
自分の意志か

いき続けることは難しい
憎しみの連なる道の上を
馴染みのない街の空気を

続けることは本能か
自分の意志か

書き続けることは難しい
躍起になって
日付に沿って

自分の目で
見てきたことを
そのままに

自分の身に
起きたことを
ありのままに

一場面も逃さずに

一日として欠かさずに

言葉を
選び
並べ
連ねる

続けることは何故か
自分の意志





今日は朝から『小学生日記』を読んでいました。
私も毎日欠かさず日記を欠かさず続けて書けるように書いていきたいです。
おばあさんは、新たな決意を日記に記しペンを置いた。
その横顔は、一瞬小学三年生に戻ったように無邪気だった。







テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

火曜日の時間

おばあさんは帽子を深く被ったままベリーニを口に運んだ。
それから何か思いついたのか、ペンをとってノートに走らせた。
猫はカウンターに身を乗り出して、おばあさんのフレーズをちょっとだけ楽しんだ。

「あちらのお侍さんからです」
突然、目の前にカルーアミルクが差し出された。
3メートル離れた席でちょんまげは前を向いたまま微動だにせず座っていた。




火曜日のこの時間
彼女はいつも一人でやってくる
どこから来たのか
誰もきかない

いつもの時間いつもの場所に
猫はいつも彼女とやってくる

いつもここだけ時間が止まっている

火曜日のこの時間
彼女はいつも帽子を被っている
誰が来たのか
誰も知らない

いつものようにいつもの火曜日
彼女はいつも猫とやってくる

少しずつ変わりゆく花の形は
人の目でみることはできない

いつも見ているから
気づかぬことがある

私はしばらく旅に出るけれど
またいつかここに戻ってきたら
彼女は火曜日のこの時間
まだここにいるだろうか

とても長い旅になりそうだ

だけど枯れない時間があるのなら
この場所に花は咲いているだろう

約束せずともまた会えるだろうか

火曜日のこの時間に





猫はストローをくわえ侍のプレゼントをうまそうに吸っていた。
その横顔は、薄暗い照明の下でゆっくりと秋色に染まっていった。
おばあさんは、またペンを取った。
侍はいつの間にか姿を消していた。侍らしく……





テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

明かりの消えた家の前で

1回2回3回4回…
猫はドアを叩いて10数えて待った。
おばあさんはもう寝てしまったのかな。
こんなに月がきれいな夜にもう眠るなんてどういうことだ。
窓も固く閉ざされているし、だけど猫は声をあげた。

「ただいまー」
明かりはつかなかった。




ウサギの森の暗がりを抜けて
ようやくきみの家の前にたどりついた

明かりがついていないから
きみはいないと思ったんだ

それともきみは闇の中で
まだ震えているの

ウサギの足取りについていけなくなって
それでも僕は夜も遅くにたどりついた

明かりがついていないから
きみはもう眠りについているの

明かりがついていないから

僕は黒い影をみていたよ

きみはどこにいるのだろう

うかがい知ることはできなくて

僕は冷たいドアを叩けなくて

ただ影の形と月を見ていた

明かりがついていないから
きみはいないと思ったんだ

それともきみと闇の中へ

僕ももう消えようと願ったんだ





背後から怪しい影が迫ってきた。
影は近づいてくるとおばあさんの形になった。
なんだ、おばあさんもいま帰りか……
猫はおばあさん越しに月の明かりを見やった。
その横顔は、暗がりを突き刺す一本の矢のように伸びていた。






テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

砂の夢

架空の城、架空の舟、架空の家庭……
誰が作ったかもわからない砂場の芸術品たち。
そのすべてを猫は大はしゃぎで踏みつけてまわった。

「幻 幻 幻 ……」

立派な城も、小さな舟も、温かい家も…
猫の豊富な運動量で、すべては砂のように崩れ落ちた。
けれども、突然忍者刀を振り回しながら少年が追いかけてきた。
猫は砂を蹴って、一目散に駆け出した。




何もない砂地の上に
泥だらけの手の中で
一つずつ成長していく

想いの数だけ
夢の城は大きくなって
日暮れに歴史が流れ込む

砂場のガラス細工が
白く輝きを放つ頃

もう僕はうれしさを抱えきれなくなって

不安に怯えて逃げ出したくなった

泥だらけの手の中で
作られた作り物が
いまはこんなに白くみえる

儚い形を抱えたいのに

もう僕は触れるのも怖くなって

泥だらけの手を
透明に洗い流した時

主のいなくなった砂地の上
ガラスの城は黒く
夜の足に崩壊していく

想いの数と
手間隙をかけて
積み上げた泥まみれの夢は

闇色の爪の下で粒子にかえる

大いなる徒労
壮大な無駄のように

一瞬で

儚く
 
儚く

儚く

愛しい

夢の形





追っ手をまいておばあさんの家の前まで帰ると一息ついた。
今日の仕事は終わりだ。
昼の幻を壊すことも、猫の仕事なのだろうか……
猫は再び後ろをかえりみた。
その横顔は、古びた家の前で、壊れたドアノブのように垂れ下がっていた。






テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

永遠に似た毎日

「こんな天気が毎日続けばいいのにね…」
おばあさんが微笑むと、シルバーカーの上で猫も頷きながらくしゃみをした。
秋晴れの下の公園で、ギター弾きはギターを弾き、おばちゃんは犬を引いていた。
明日の10番はリフティングに夢中だ。
その横ではジャグラーがピンポン玉をジャグリングしている最中だ。
一つ二つとジャグラーの手から離れた玉は空に吸い込まれて消えていく…
猫は身を乗り出して空を仰いだ。



毎日あなたはそこにいるから
私はいつも安心していた

毎日あなたはそこにいるから
私はいつか忘れかけてた

毎日は永遠ではないのに

あなたはありすぎて
私は忘れてしまう

毎日あなたは笑っていたから
私はすっかり安心していた

光に満ちた空が
明るさを忘れさせるように

あなたはありすぎて
私は忘れてしまう

毎日あなたはあなただから
私はいつか忘れかけてた

毎日は永遠ではないのに

毎日あなたはそこにいるから
毎日あなたは笑っていたから

弱すぎるわたしはみていた

ただすぎる永遠のように

美しすぎる毎日を





空に消えたピンポン玉がジャグラーの手の中に戻ってきた。
それは昨日の続きが今日になって戻ってきたようだった。
あるいは、消えてしまうには空が青すぎたのかもしれない。
猫は繰り返される軌道に魂さえも奪われそうだった。
その横顔は、青空の下の授業の中でしきりに頷いている子供のように見えた。





テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

無力な指先で

とうとうおばあさんは寝たきりになってしまった。
あんなに元気だったおばあさんが…
一緒に奇跡の水を飲んで、一緒にブロッコリーの木の下で一番星をみて…
耳は随分遠くなっていたけれど、元気な声でうたっていたのに。
猫は枕元に座っておばあさんを見つめていた。
額に手を当ててみると少し熱かった。
もう丸一日おばあさんは動かなかった。



僕の指に傷を癒す力はない
それでもきみに触れている

いつかきみの指先が動くように

僕の目にきみをとかす力はない
それでもきみを見つめている

いつかきみの目が開くように

僕の声にきみを動かす力はない
それでもきみに話しかけている

いつかきみの唇が動くように

僕には何の力もない

治すことも
癒すことも
何もできないけれど

それでもきみのそばで
ずっときみを見守っている

いつかきみが言葉を思い出すように
いつかきみが笑顔を取り戻すように

そんな日を待ちながら

届いているかわからないけれど
それでもきみに語りかけている

いつかきみが僕を思い出すように
いつかきみが自分を取り戻すように

魔法を使えない無力な僕は

それでも僅かな希望を胸に

微かに息をもらすきみに触れながら

ただ静かに時を過ごしている

今日もずっと

きみと一緒に





「ふあー、だいぶましになったよ」
突然、おばあさんがベッドから起き上がった。

「季節の変わり目はいつも風邪をひいてしまうね…」
案外大丈夫そうなおばあさんを見て、猫はクルクルと宙を一回転した。
猫も少し元気になったように。
その横顔は、季節の変わり目に吹くそよ風のように優しかった。





テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

あきが来るまで

「来る 来ない 来る……」
おばあさんは、ひまわりの種を一つずつ投げている。
「誰が来るんだろう?」
猫は不思議に思いながら節分の豆まきを思い出していた。
「来ない 来る 来ない……」
おばあさんは、ひまわりの種を窓の外へ投げている。
「もう秋ならとっくに来ているのに!」
猫はおかしくなって少し笑った。
寒い冬さえこなければ猫は秋が好きだった。
けれども、猫は肉球も氷りつくあの冬を思い出すと少し顔を曇らせた。
その横顔は、フリーズした15インチ画面のように小刻みに震えていた。



暑いねって
もう少し
交わしていたかったな

少しずつ気をひきながら
弱気な異星人のように
ゆっくりと近づいてくる

夏は突然終わるけど
夏と秋の間に入り込むのは
言葉にできない無数の季節

時折現れる夏の幻影は
真昼の選択を悩ませるけれど

気がついた時には
もう黄昏の中で肩を抱えてるんだ

だけど忘れないよう
ゆっくりゆっくり離れていってね

いつも暑いねって
あと少し
笑っていたかったな

少しずつ顔をみせながら
内気なコガネムシのように
ゆっくりと歩いてくる

雨は突然降り出すけど
きみと僕の間に広がるのは
単位を持たない冷たい距離

時折現れるきみの面影は
入れ替わる時間を遅らせるけれど

たどり着いた時には
過去の顔を失っているんだ

だけど忘れないよ
ゆっくりゆっくり離れていくように

夜がまた長くなるね

テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

カレンダー
09 | 2006/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
リンク(相互、片道、色々…)
最近の作品
最近のコメント
プロフィール

junsora(望光憂輔)

Author:junsora(望光憂輔)

おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
たいした意味などありゃしない


旅の途中の紙くずたち
今日も散らばって行こう
いつも破り捨てられても

猫と婆とそんな横顔はリンクフリー
「喜多さん、いいとこばっかじゃねえか」

最近のTB / 返詩
そんなカテゴリー
折り返し地点

『折句ストレート』

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

フリー素材のある場所

・天の欠片
・e-素材web
・素材屋さんromance.com
・アイコンワールド




RSSフィード
月別アーカイブ
フリースペース

フリー百科事典
『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























ブログ内検索
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。