心 の 隙 間 か ら 出 て お い で
流される日々
2006-09-05 Tue 20:00
さらっていったのは風。
さらわれたのはおばあさんの帽子。
川に浮かんだ奇妙な形の帽子は、ゆっくり流れていく。
おばあさんは口をあけて無言の悲鳴をあげている。
けれども、帽子は距離をあけておばあさんから離れていくようだった。
猫が駆け寄って、手を伸ばすと必死に帽子を威嚇してみせた。
「おい! おい! ちょっとおい!」
猫の不思議な動きにも帽子は動じる素振りもみせず、それはまるで小さな舟のように、不意に始まった旅ではあるけれどもう呼び止めても戻ることはないのだった。
追いかけながら、時に先回りしながら猫は対話を試みる。
その横顔は、流れることを知らない星のように直向だった。



風にさらわれて
流れていく帽子のように

流されるのは誰だろう

関心の度合と他人の反応に
賽銭の金額と抽選の結果に
最初の報道と最新のスペックに

振り回されるのは誰だろう

一人の愚か者と判決の行方に
一枚の紙切れと看板の見せ方に
一瞬のスピードと照明の当て方に

流されるのは僕だろう

身勝手なルールと作られた順位に
古びたマニュアルと与えられた制服に
気まぐれなタイミングと乗り合わせた隣人に

いつも振り回されるのはなぜだろう

意志を固めた自分を持っていても

川に浮かんで
逃げていく帽子のように

流されるのは誰だろう

逃げ込む占いとみせかけの笑顔に
染み渡る音楽と壊れかけた優しさに
過ぎていく夕暮れと離れていく友達に

自分で選んでいるはずなのに

いつも揺れているのはなぜだろう

最初の挨拶と降り始めの雨に
消えていく語尾と暮れていく空に
何気ない一言と何気ないそよ風に

みんな持ち運ばれて

いつかみえなくなる帽子のように

流れつくのはどこだろう


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