|
2006-08-21 Mon 17:52
後悔が猫の背中を突き刺していた。
けれども、それより遥かに速いスピードで化け物の影が猫を追っていた。 魔物のテリトリーを侵してしまったのは、自分だった。 必死の形相で、電話ボックスをよじ登った。 ここまでは登れる奴はいない… けれども、化け猫はその巨体からは想像できない身軽さで透明な塔を制覇してしまう。 小さな猫は、飛び下りると今度は下のわずかな隙間に身を縮めると箱の中に逃げ込んだ。 化け猫は隙間から手を入れるのが精一杯だ。 やがて、あきらめて闇の中に帰っていった。 猫はその透明な箱の中で安堵のため息をついていた。 道行く人が不思議そうに、電話ボックスの中に取り残された猫を眺めていた。 それは、ショーウィンドウに飾られた猫のようだった。 「どなたか、猫はいりませんか…… おとなしい猫はいりませんか……」 風が唄っていた。 透明な箱の中で猫の目が輝く。 その横顔は、時に取り残された透明な旅人のようだった。 箱の中で話し手を待ってる みんながみんな手の中に持っているから みんなみんな去っていった 今日は誰も訪れない 一人分の透明な箱をつくって たったひとりを待ってる みんな小さな自由を手にして 歩みを速く世界を狭く変えていった 箱の前に並ぶ人たちは もうみんな遠くに行ってしまった 昨日は誰もこなかった 箱の中で話し声を待ってる みんながみんな自分を持っているから みんなみんなみえなくなった 透明な箱は 一人分の澄んだ居場所をつくって たったひとりで立っている みんながみんな歩きながら話せるから みんなみんな離れていった 今日は誰も入ってこない 足を止める人は誰もいない 手の中の声だけが通り過ぎていくだけ 箱の中では待ちすぎた静寂がざわめく 人の歩みは止まらない 明日もきっと箱の中で ただ時だけが過ぎていく |
|
| 猫と婆とそんな横顔 |
|
メールフォーム |
|
|
Powered By FC2 |
|
|
フリー素材のある場所 |
|
・天の欠片
|
RSSフィード |
|
|
フリースペース |
|
フリー百科事典
|
ブログ内検索 |
|
|




