遠ざかる距離
2006-08-12 Sat 21:15
本当に長い夜だった。
その夜はまるで一週間のように長く感じられる。
そんな夜…
おばあさんは、ちゃんと眠れているのだろうか?
猫は少しの間、唄うことを止め置いてきた世界のことを振り返った。
疲れた喉を気にかけるように、後ろ足で何度も首をさすってみる。
「いったいどこへ?」
唄は、届いた感じが今日もしなかった。
自分の声の小ささに少し気が滅入った。
夜が終わるまでにまだ唄わなければ……
けれども、夜はもう猫の声ほどに消えかかっている。
猫は別れのバラードを唄い始めた。
その横顔は、溶け始めた夜と共に明るさを増していった。
夏の朝が迫ってきた。



あなたのことを好きだけど
時々私は離れていく

あなたの唄が好きだけど
ずっとそばにはいられない

もう一度近づくために
今はあなたとさよならする

冷めたわけではない

だけど私は進まねばならない
本当の自分を探す旅の中へ

あなたの唄を聴きたいけれど
私は私を唄わなければならない

忘れたわけではない

だけど私は探さねばならない
私が唄うべき唄が眠る場所を

最初に私はひとりだった

だから時々ひとりでなければならない

あなたの唄を想うけれど
もう一度唄い出すために
時々元の場所を思い出さねばならない

逃げるわけではない

もう一度近づくために
今は少し離れなければならない

あなたのことを想うけれど
もう一度思い出すために
時々ひとりの場所に帰らねばならない

消えるわけではない

もっとあなたに近づくために
今は少し寂しくならねばならない


あなたの唄を好きだけど



だから私は離れていく




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