心 の 隙 間 か ら 出 て お い で
溶けない砂糖
2006-07-07 Fri 21:24
「またおやすみかね…」
おばあさんの微笑みが猫を横切った。
猫が深い眠りに落ちた頃、カップに落ちた砂糖はおばあさんの魔法のスプーンの力でようやく頑なな自我を開放し、オレンジ色の中にその身を溶かし始めた。
忘れかけていた太陽は、もう本当に忘れるほど遠くに行ってしまい、その代わりオレンジを照らしているのは今は月だった。
叶わぬ願いほどに頼りなく薄くなった月は、それでもおばあさんの家の開かれた窓からささやかに入ってくる風と共に優しく光を投げていた。
そしてようやく、本当にようやく砂糖は溶け込んだ…
おばあさんはそろそろ電気をつけようか考えながら、ソファーに眠る猫を見た。
「たくさんいい夢をみれますように…」
猫はまだ夢の中で息をしていた。
その横顔は、月に溶け込む砂糖のように甘く輝いていた。


氷砂糖は氷ではないけれど
口に含めば少しひんやりして
南極ペンギンの遊戯のように
少しずつ不安を溶かしていく

あなたは氷砂糖
光のキャンディー
私の中にとろけて溶けた

角砂糖は四角く尖っていたけど
カップの中で静かに融和しながら
ソファーの片隅で眠る猫みたいに
もうすっかり角が取れてしまった

あなたは角砂糖
振れないサイコロ
不思議なルールに転げて溶けた

黒砂糖は自分の色を語り
強い風味をばらまきながら
夜が星を明かすかのように
鮮明に記憶を溶かしていく

あなたは黒砂糖
ふにゃけた太陽
軒端の月に揺らいで溶けた

渦巻いたままの願いを置いて
時間は砂のように流れていったけど
一粒だけを逃さないほど甘くはなかった

ただ甘いだけではいられなかった

それでもあなたは砂糖

うつむいたままの夜の上を
あなたは砂のように流れていったけど
どこにでも溶け込めるわけではなかった

それでもあなたは砂糖

やっぱりあなたは砂糖

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