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いなくなったきみ

「戻ってこないねえ…」
両手に顎を乗せて、おばあさんは窓の外の夜を見つめていた。

足りないの
この場所にある
生活は
お婆のくれる
ご飯も愛も

猫の詠う歌が遠くの夜から聞こえてきたような気がした。
いればいつも怠けてばかり、あるいは邪魔をしてばかりだったけど…
いなければいないで、それは主役の消えたミュージカルのようにも感じられた。
第一幕におばあさんはひとりだった。
月が雲に逆らって流れていくのを空ろな目が追っている。
その横顔は、月の夜の下で我が子を待つ親鳥のようだった。
鳥が、月を横切った。



どこに行ってしまったの
猫はどこに行ってしまったの
なぜ今日は戻ってこないの
別の居場所を見つけたの

どこに行ってしまったの
私の友達どこに消えたの
なぜ今日も戻ってこないの
別の自分に目覚めたの

どこに行ってしまったの
私を置いて消えてしまったの
なぜ姿を見せないの
道に迷って戻れないの

どこに行ってしまったの
私を残して自由を選んだの
なぜ声がしないの
もう疲れてしまったの

どこに行ってしまったの
私の友達
どこに消えてしまったの
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テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

さよならチャーハン

混じり合うのは何だ?
おばあさんは片手で軽々と鍋を振っていた。
このチャーハンには何が入っているんだろう?
猫はキッチンによじ登り、こっそりと様子をうかがってみた。
何も入ってないんだろうか?
そんなことがあるのだろうか?
舞うように返される鍋の中で雪が舞った。
それは時々、横殴りに…
パラパラと、舞う白い雪が冬を思い出させ少し身震いした。
けれども、雪は徐々におばあさんの熱意で黒くなっていく。
そして、夏が戻ってきた。
「よし、できたよ猫チャーハン!」
猫は我に返って、皿に盛られた雪山に顔を近づけた。
その横顔は、登山家に近づいていくイエティのようだった。
そして、パラパラと笑みがこぼれた。



パラパラ パララ
鍋の中で舞い上がる
チャーハンはこぼれるよ

パラパラ パララ
鍋の中で歌って踊る
また誰かがこぼれるよ

チャーハンはこぼれるもの
こぼれたものは振り返らない

だけど強く振れ

気にするな チャーハン

パラパラ パララ
熱意に負けて
だんだんほぐれてくるよ

チャーハンはパラつくもの
ちゃんと作れ チャーハン

パラパラ パララ
チャーハンはうたうよ
婆ちゃんちゃんと鍋振って

それでも
チャーハンはこぼれるもの
あふれたものは取り戻せない

だけど思い切り返せ

気にするな 婆ちゃん

パラパラ パララ
鍋の中ではずんでる
だんだん軽くなっていく

パラパラ パララ
記憶の隅で笑ってる
心の隙間に落ちていく

陽気なチャーハン飛んでいく
遠い空に散っていく

チャーハンはこぼれるもの

人の手には負えないもの


猫といた夏

カチッと音がした。
おばあさんが片手でたまごを、見事に割ったのだ。
お椀に落ちた黄身はウサギの空に浮かぶ島のようにひっそりと揺れた。

落ちていく
婆のみごとな
手さばきで
ふわふわ浮かぶ
平和な小島

猫は一句詠い終えた。
けれども、おばあさんが箸を突き刺し、回し始めた。
「混ざれ、混ざれ、混ざり合えばいいのさ…
かなしみの炎も駆け出しの昨日も…」
おばあさんは、そうしてまた創造と破壊を繰り返すのだろうか…
猫は複雑な思いで目を丸めている。
その横顔は、水平線を真っ直ぐ歩く夏のウサギのようだった。



たまごをといていた
その間ずっときみといた

きょうは朝からきみといた

ほつれた雲をといていた
そしたらアイスがとけてしまった
きみは冷たい目をしてた

先生礼節といていた
その間僕らは暗号といた
奴らはいつも謎混じり

白い靴紐とけていた
そしたらひとつの誤解がとけた
笑いながらふたりで歩いた

たまごをといていた
その間ずっときみといた

昨日は一日 きみといた

赤い髪をといていた
その間ひとつの謎がとけた
花火の広がりになびきながら

夏の絵の具をといていた
その間僕らはうちとけた
ふたりで短い夏を描いた

先生呪いをといていた
その間お化けは武装をといた
あとは少し涼しくなった

たまごをといていた
その間ずっときみといた

あれからずっと きみといた

テーマ : 詩・唄・詞
ジャンル : 小説・文学

犬と鞄

疎らに咲いたフタリシズカの影から猫はひとり道に飛び出した。
魚をくわえて人を引いて歩く犬と遭遇して猫は身構えた。
大きな人を引っ張ってすごいけれど、どうして魚なんかくわえているのだろう…
猫は犬から3歩離れた場所で空想を揺らしながら固まっていた。
けれども、それはよく見ると魚ではなく鞄だった。
犬は不思議な生き物を見るように、横目で猫を見た。
その横顔は、100点をとった子供のように自慢げだった。


心地よい夜風に揺られて
尻尾が楽しく笑ってる
口にしっかり挟んだ鞄
誰にも渡さない大事な鞄

半袖を突き刺す夜の風
けれど尻尾は揺れたまま
道行く人の視線を浴びて
しっかりくわえた小さな鞄

おばあさんは犬に引かれ
おじいさんがその後に続く
宝物をくわえて先頭を行く
尻尾は笑顔を絶やさない

花の影から猫が飛び出して
目を見開いて固まったまま
それでも構っていられない
いまは三人の大事な時間

影ながら

猫の目の中で影が遊んでいる。
おばあさんの創り出す影絵は、影ながら影以上の存在感を持って揺れていた。
両手を虫の翼のように動かすと、影は友達となって現れた。
猫は友達を見つめながら目で話しかけてみるが、友達は何も言わなかった。
そして友達は長靴に変化した。
長靴を履いてみようと思い、猫は足を伸ばしたがやはり無理だった。
長靴がどんどん長くなって高層ビルに変化した。
ビルの75階から人間が顔を出したので猫は驚いて後ずさりした。
その横顔は、あまりの驚きのせいで影そのもののように薄く消えかかっていた。


あなたは気づかないけれど
いつも遠くから見てるよ

あなたは似てると思うんだ

声はかけれないけれど
何も伝えられないけれど
ずっとあなたを見てるよ

あなたの姿に
私を重ねて見てるんだ

どこまで遠くても
こんなに近くから

私は追いつけないけれど
見失うこともできないから

あなたは似てると思うんだ

あなたの存在に
私を重ねて想うんだ

どんなに近くても
こんなに遠くから

あなたが歩き続けるなら
私も一緒について行くよ

あなたは気づかないけれど

いつも近くにいるよ

テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

赤いステップ

「雨の日は足下がわるくてね…」
でこぼこ道、水溜りを避けて歩きながらおばあさんは、猫に話しかける。
けれども、猫はシルバーカーに揺られて鼻歌を口ずさんでいた。
赤い薔薇の視線のように小さな動物が道路を横切った。
「ウサギかねー?」
それはイタチであることを猫の瞳は見て取ったが、あえてそれを口にすることはなく、猫は逆にウサギの耳の長さのことを思い出して少し微笑んでさえみせた。
その横顔は、雨の夜の月のうさぎのようにくつろいでいた。


赤いウサギはいそいそと
夕暮れを雨が照らす道の上
リスのように手を振って
小さな水たまりを跳び越える

飛んでいけ 
真夜中の雨を越えて

赤いウサギのステップは
ウサギの鞄のように
軽やかに陽気なステップ

ずるい蛙の跳躍は
蛙の頭のように
緩やかに賢明なステップ

ルンルン飛ぼう ルンルン

ステップは足取りのように歌う
くすりと音痴でも
未来は自分で変えるって

飛んでいけ
夏の未来鳥のように

羽根を持たないステップは
羽ばたくほども大きくない
雨のように鮮やかに
人溜りを飛び越える

グングン飛ぼう グングン

赤いウサギは足を止めて歌う
無理と承知でも
トライは気分で飛び放つと

赤いウサギのステップは
真似のできない陽気さで
僕らの垣根を跳び越える

さあ 飛ぼう
絶望の雨を越えて

テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

パジャマの老人

老人はあまりに石に似ていた。
シルバーカーが横断歩道の手前にさしかかった時、猫は跳び上がった。
石がわずかに動いたような気がしたのだ。
「大丈夫だから…」
おばあさんは、猫を抱きかかえながら、石のようなおじいさんを盗み見た。
老人はやはり石に似ていた。
その横顔は、頑固な軌道を描き落ちてきた隕石のようだった。


石の上に腰掛けて
色の変わりを待っていた

動かぬ老人は
何を想っているのだろう

魚を待つ釣り人のように
歩道の波を見つめながら

普段着のままの老人は
顎に手をついて地に杖ついて
石のように固まっていた

雲の上から蟻を見る賢者のように
人の波を見つめながら

くつろいで銅像のように固まって
夜の中で息をしていた

車は息を止めて
窓の外へジャズが泳ぎ出す

横断する人のリズムが
白と黒のボーダーに
音符の足跡を置いていく

誰も逆らえない波の交わり
点滅する青さの中で
止まる影 加速する光

それでも老人は動かない
何を想っていたのだろう

テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

パンダのオセロ

「笹の葉 サササ さっぱりしてる♪」
おばあさんは口ずさんでいる。
猫が黒を突っつくと、おばあさんがひっくり返してあげる。
みるみる黒の領土が広がっておばあさんはピンチに陥った。
「隅っこばかり取ってあんたは賢いね♪」
けれども、猫は言葉を返さなかった。
おばあさんが端の3番目に白を置くと横一列が白に変わった。
猫の目のように形勢は変化する。
「笹の葉 サササ サササと振るのさ♪」
おばあさんの歌の中で猫は少し考え込んでいた。
その横顔は、七月の浮雲のように白くなっていた。


パンダのオセロははっきりしてる
緑の森を黒く塗り
朝まで遊んで真っ白パンダ

パンダのオセロはドローがない
白く返れば笑顔いっぱい
黒く返れば頭は真っ白

パンダのオセロは振り返らない
隅から隅まで自分で歩く
ミスからミス出てひっくり返る

パンダの進路ははっきりしてる
白熊の意見しっかり聞いて
黒猫の後に従って進む

パンダの往路はゆったりしてる
笹のように揺ら揺らと
黒幕迫っても白を切ってる

パンダとオセロははっきりしてる
隣の芝を黒く塗り
朝まで遊んで真っ白なんだ

パンダはなんだかかわいそう
白黒つけて顔振って
わかりやすくて人気者

テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

溶けない砂糖

「またおやすみかね…」
おばあさんの微笑みが猫を横切った。
猫が深い眠りに落ちた頃、カップに落ちた砂糖はおばあさんの魔法のスプーンの力でようやく頑なな自我を開放し、オレンジ色の中にその身を溶かし始めた。
忘れかけていた太陽は、もう本当に忘れるほど遠くに行ってしまい、その代わりオレンジを照らしているのは今は月だった。
叶わぬ願いほどに頼りなく薄くなった月は、それでもおばあさんの家の開かれた窓からささやかに入ってくる風と共に優しく光を投げていた。
そしてようやく、本当にようやく砂糖は溶け込んだ…
おばあさんはそろそろ電気をつけようか考えながら、ソファーに眠る猫を見た。
「たくさんいい夢をみれますように…」
猫はまだ夢の中で息をしていた。
その横顔は、月に溶け込む砂糖のように甘く輝いていた。


氷砂糖は氷ではないけれど
口に含めば少しひんやりして
南極ペンギンの遊戯のように
少しずつ不安を溶かしていく

あなたは氷砂糖
光のキャンディー
私の中にとろけて溶けた

角砂糖は四角く尖っていたけど
カップの中で静かに融和しながら
ソファーの片隅で眠る猫みたいに
もうすっかり角が取れてしまった

あなたは角砂糖
振れないサイコロ
不思議なルールに転げて溶けた

黒砂糖は自分の色を語り
強い風味をばらまきながら
夜が星を明かすかのように
鮮明に記憶を溶かしていく

あなたは黒砂糖
ふにゃけた太陽
軒端の月に揺らいで溶けた

渦巻いたままの願いを置いて
時間は砂のように流れていったけど
一粒だけを逃さないほど甘くはなかった

ただ甘いだけではいられなかった

それでもあなたは砂糖

うつむいたままの夜の上を
あなたは砂のように流れていったけど
どこにでも溶け込めるわけではなかった

それでもあなたは砂糖

やっぱりあなたは砂糖

テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

夕暮れのスヌーズ

「なかなか溶けないもんだね…」
角砂糖はカップの中で紅茶のオレンジと夕日の赤に染まりながら浮かんでいた。
おばあさんは銀のスプーンをカップの中でゆっくりと回している。
秘密の薬を調合する魔女を見るような目で、猫はおばあさんを見つめるうちに、やがて頭をソファーの隙間に沈めていった。
時々スプーンの立てる冷たい金属音で、猫は目を開けてみるけれどすぐにまた閉じてしまう。
その横顔は、夢に沈んでいくお日様のように薄かった。


目覚ましを止めても
それはまたすぐに目を覚ます
その泡沫の時は
夢の時間のように

警報を止めれば
私は一瞬で
眠りの旅に出発する

私の意志ではない
夢の世界から声がするのだ
目を閉じた時
その扉に吸い込まれてゆく

また警報が夢世界を遮って
私の夢舞台を破壊するけれど
指一本で決着を図って

現実を閉じてしまえれば
再び夢世界は色を放つ
私には背負う翼がある

それでも現実の5分は
私の羽を食べ尽くすし
夢の扉も破壊してしまう

試練の時は迫る
夢世界との決別を
夢と現実の選択を

うつらうつらと

スヌーズの真ん中に

今ならまだ戻れるのに
まだ私は夢の奥に
未練を置いている

うとうと うとうと

まだ私は行き来している
スヌーズの波の上で

私は両手をついて
腕を立てようと試みる
胸の奥に
目覚める意志を秘めながら

うとうと うとうと

それでももう一度
目を閉じてしまいたい

私は立ち上がる
ふらつきながらも
少しずつ現実に目を開ける

うとうと うとうと

だけどもう一度
現実を閉じてしまいたい

まだ自分の場所に残りたい
あの場所はまだ残ってる気がする

けれど私は歩き出した
まだ永遠のスヌーズの中で
想いを引きずりながら

私は今もまだ
永遠のスヌーズの中で
現実の道の上を歩く

夢の続きに残る想いを
ずっと引きずりながら

テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

傾けなければ

「ちょっと一息入れようかね…」
忘れかけた太陽が窓から入り込んで、ガラスの瓶の中を優しく突き刺していた。
おばあさんは角砂糖を一つ取り出すと、カップの中に浮かべようとしたが、それは寸前のところで落ちてテーブルの下まで転げてしまった。
そして、それはおばあさんの家が傾いているせいでどんどん遠くに、まるで意志を持った砂糖のように転げていくのだ。
猫の足下まできたところで、猫は1タッチでそれをさばくとすぐさま強烈なシュートを放った。
ドライブ回転のかかったシュートは、無人のゴミ箱にすんなりと収まり、猫は誇らしげな瞳で、おばあさんの方に少しだけ首を傾けた。
その横顔は、すっかり西に傾いた夕日の中で少し紅潮して見えた。


ねえおばあさん

すりきれいっぱいに詰まった瓶
まっすぐに置いたグラスの中へ
このまま注げば零れてしまうよ

グラスも一緒に手に取って
傾けなければ零れてしまうよ

だからおばあさん
その肩に私を傾けてもいい

いっぱいすりきれたあなたの手
まっすぐに老いたあなたの肩に
このまま私の首を傾けてもいい

私はもうぐらぐらしてる
まっすぐこのまま立っていたら
もう雫が零れ落ちてしまうから

ねえおばあさん
傾けなければ零れてしまうよ

ボロボロに散らかった
この狭いベッドも
途切れ途切れになった記憶も

片付けなければ溢れてしまうよ

ねえおばあさん

私の言葉にいつも耳を傾けてくれた
遠い耳で私の言葉を返してくれた

だからいつも
私の近くに笑顔があった

ねえおばあさん
だけどいま何かが
少し傾いてしまったね

その肩にもう一度
私を傾けてもいい

テーマ : 詩*唄*物語
ジャンル : 小説・文学

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junsora(望光憂輔)

Author:junsora(望光憂輔)

おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
たいした意味などありゃしない


旅の途中の紙くずたち
今日も散らばって行こう
いつも破り捨てられても

猫と婆とそんな横顔はリンクフリー
「喜多さん、いいとこばっかじゃねえか」

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『折句ストレート』

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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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