忘れ物
2006-05-26 Fri 21:23
猫の額よりもおばあさんの家よりも広い通路を通る内に、買い物カゴの中は、春の野菜と猫の好物であふれていた。
海賊のように力強い手つきでカゴをレジに置くと、おばあさんは鞄の中から財布を取り出した…。
けれども、出てきたのは猫その人だった。
おばあさんは、猫を押し戻しながら鞄の奥底を夢中で探っている。
その姿は、あたかも潮干狩りに勤しむ老婆のように見えた。
けれども、あさりは取れず財布もやはり顔を出さなかった。
そして、その代わりに猫が顔を現した。
その横顔は、忘れな草のように何かを問いかけていた。


つまらない行き止まりを
踏み越えて
もう一度
忘れ物を取りに行く
汚れた靴で飛び出して
絶望の淵を彷徨った
まだあの場所にあるのなら

終わらない行き止まりを
乗り越えて
もう一度
忘れ物を取りに行く
汚れた空を突き刺して
滅亡の街を漂った
まだあの場所にいるのなら

無限の人込みさえも
この手でかきわけて
私は行こう

けれどあの道は
もう曲がれない
あの場所に続く道は

宙に浮いたハートは
時の力で捻じ曲がり
記憶を辿る細い道は
昨日よりも折れ曲がる

遥かなる登山家のように
壁と時間をよじ登り
辿って伝って疑って
汚れた鏡を断ち切って

まだあの場所にあるのなら
まだあの場所で待つのなら

無情の人波さえも
この足で飛び越えて
私は行こう

おぼろげな月が
夜明けの空で白く
そして消えていく前に

だけどあの道は
もう曲がれない
あの道だけは
きっと曲がれない
あの場所に
続く道だから

忘れ物は
まだ置いたまま

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