心 の 隙 間 か ら 出 て お い で
石の投手
2006-05-23 Tue 00:10
夕日の沈む河川敷で、猫とおばさんは道草をくっていた。
水を弾く音が微かに聞こえてくるのは、遠くで少年たちが投げている石音に違いなかった。
おばさんは一つ石を拾い上げ、少年を真似て投げてみた。
震える手で投げられた石は、少年の未来ほどにも遠くに飛ぶこともなく、それはささやき声が聞こえるほどの場所で落ちてしまう。
けれども、猫はおばあさんを気遣って遠くに視線を投げてみせるのだ。
また一つ、手に取って投げた石はすぐそばで落ちてしまうけれど、猫はそれがまるで見えなくなるまで飛んでいったかのように、素早く首を動かすと、視線を地の果てまで泳がせた。
その横顔は、転がり続ける石のように頼もしくみえた。


夜の大きさに向かって
届かぬ石を私は投げる
ただ沈み行く石を私は投げる

静かな湖に願いだけを込めて
波紋を呼ばない石を
私は投げる

ありあまるほどの石の中
まだ投げていない石がある
だから私はこの石を
震える指先で投げつける

この押し黙った夜の中
まだ投げていない場所がある
だから私はこの石を
届かぬ力で投げつける

この石はもう
投げたかな
そんな気もするけれど
それでもやっぱり投げてみよう

石がまだあり続ける限り
明日もまだ投げていない石を
きっと私は見つけるだろう

この石はもういつか
なぜだかな
そんな気もするけれど
それでもやっぱり投げてみよう

果てない石が眠り続ける限り
明日もまだ投げてない方角を
きっと私は見つけるだろう

だから私はこの右手で
つたない石が伝える何かを想い
欠けた石でも私は投げる
欠片はどこかで合わさって
受け継ぐ誰かに届くことも

だから私は想いを込めて
震える指で石を投げる
小さく磨り減った石ひとつ
私はまたあなたに投げる

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