春のブランコ
2006-04-10 Mon 16:57
おばあさんは、5才の公園に帰った様子でブランコに揺られていた。
海の上で、風を受けてヨットの帆が揺れるように、それは小さな風ではあったけれど、おばあさんは楽しそうに揺られていた。
「おばあさんは、ブランコの上で時間の海を渡っているのだ」
猫の頭の中を、空想の波が押し寄せてきて、優しい春の青さで満たした。
おばあさんは、時の経つのを忘れ、ブランコの上で何度かの冬を過ごし、何度目かの春を迎えた。
その間、猫はじっとおばあさんを見つめていた。
あるいは、季節そのものを見ていたのかもしれない。
その横顔は、季節に貼り付いた昆虫のようだった。

ピアノの消えた教室から
旋律と共に駆け落ちた
揺れて揺られて
揺られて落ちた
戻れないブランコ
もう行ったきり
何も振り返れない

証明の消えた存在から
自分と共に抜け落ちた
揺れて揺られて
振られて落ちた
戻れないブランコ
もう行ったきり
今も振り返れない

やっとここにこぎつけた
手にした絆を
きしませながら
木は朽ち果てて
知恵のない鎖は
海の向こうで
ずっと 空回り

それでも彼女は
折れたクレヨンをつなぐように
それでも彼女は
折れたクレヨンで海を描くように
波が見えなくなるまで
漕ぎ続けた

揺れて揺られて
ずっとここで
ずっとこのまま
揺れたまま
戻れないブランコ
もう行ったきり
誰も振り返れない

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