心 の 隙 間 か ら 出 て お い で
あなたの本
2006-04-03 Mon 00:29
細かい字を読むのが苦手だったおばあさんは、今日は絵本を読んでいたのだ。
猫もまたテーブルの上でじっとヒゲを通して絵本を覗き込んでいる。
猫と魔術師と村人とお姫様が絵本の中で踊っていた。
絵本の中の猫は、絵本の中の存在ではあったけれど、今にも本の中から飛び出しそうだった。
絵本の外の猫は絵本の中に入りたそうだった。
本当に、入りたそうだったのだ…。
けれども、猫は、絵本の中に一度も入ったことがなかったのだ。
その時、絵本の中の動かない城の中で、お姫様の口元が少しだけ動いたのを猫は見てとった。
猫は少し、目を丸くしたようだった。
その横顔は、魔女に心奪われた猫のようだった。

海辺の月明かりで
読む本は
あなたの描いた
薄っぺらい ファンタジー
魔女は 呪いを持て余し
王は 城を持て余す
あなたの魔女が
友達で
魔女の魔法で
夢をみる

真昼の月明かりで
読む本は
あなたのくれた
青く大きな テレパシー
あなたの空が
憧れで
あなたの雲で
涙する

何度も何度も
読み返し
ずっと何度も
読み返し
今 また
読み返す


夜の雨音で
聴く本は
何度も開いた通り道
また最初から
また途中から
台詞は雨に溶け込んで
ボロボロに色あせた通り道
私の世界が冷たい時
あなたの世界は温かく
私の世界がダメな時
あなたの世界で生きていた

月の薄明かりで
読む本は
いつも
私の宝物

みんなの言葉が死んだ時
あなたの言葉で救われる
すべてがなくなりそうな時
あなたのくれた
物語の中に
そっと光は射し込んで
そっと私を照らし出す

世界の暗がりで
読む本は
あなたの描いた
儚く 明るい
ファンタジー
今も
私の
宝物

いつでも
私の
宝物

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