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あなたの本

細かい字を読むのが苦手だったおばあさんは、今日は絵本を読んでいたのだ。
猫もまたテーブルの上でじっとヒゲを通して絵本を覗き込んでいる。
猫と魔術師と村人とお姫様が絵本の中で踊っていた。
絵本の中の猫は、絵本の中の存在ではあったけれど、今にも本の中から飛び出しそうだった。
絵本の外の猫は絵本の中に入りたそうだった。
本当に、入りたそうだったのだ…。
けれども、猫は、絵本の中に一度も入ったことがなかったのだ。
その時、絵本の中の動かない城の中で、お姫様の口元が少しだけ動いたのを猫は見てとった。
猫は少し、目を丸くしたようだった。
その横顔は、魔女に心奪われた猫のようだった。

海辺の月明かりで
読む本は
あなたの描いた
薄っぺらい ファンタジー
魔女は 呪いを持て余し
王は 城を持て余す
あなたの魔女が
友達で
魔女の魔法で
夢をみる

真昼の月明かりで
読む本は
あなたのくれた
青く大きな テレパシー
あなたの空が
憧れで
あなたの雲で
涙する

何度も何度も
読み返し
ずっと何度も
読み返し
今 また
読み返す


夜の雨音で
聴く本は
何度も開いた通り道
また最初から
また途中から
台詞は雨に溶け込んで
ボロボロに色あせた通り道
私の世界が冷たい時
あなたの世界は温かく
私の世界がダメな時
あなたの世界で生きていた

月の薄明かりで
読む本は
いつも
私の宝物

みんなの言葉が死んだ時
あなたの言葉で救われる
すべてがなくなりそうな時
あなたのくれた
物語の中に
そっと光は射し込んで
そっと私を照らし出す

世界の暗がりで
読む本は
あなたの描いた
儚く 明るい
ファンタジー
今も
私の
宝物

いつでも
私の
宝物
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junsora(望光憂輔)

Author:junsora(望光憂輔)

おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
たいした意味などありゃしない


旅の途中の紙くずたち
今日も散らばって行こう
いつも破り捨てられても

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「喜多さん、いいとこばっかじゃねえか」

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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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