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紙飛行機のように

猫の中で、おばあさんは折り紙職人の神様と呼ばれていた。
春の風と月の明かりが優しく射し込む部屋の中、職人のように手馴れた手つきで緑色の紙を折りあげると、瞬く間に猫ができあがった。
緑色の猫は鳴き声も上げずテーブルの上に座り込むとじっと猫の方を見つめている。
おばあさんは、青色の紙を川の流れのような手つきで折りあげると、瞬く間に千羽鶴ができあがった。青色の鶴は平和の願いを込めながら、窓の外の白い月を見上げていた。
折り紙職人は、赤色の紙を胸いっぱいの愛を込めるような手つきで折りあげると、瞬く間に紙飛行機が織り上がった。
猫がふっと息をかけると、赤色の紙飛行機は窓の外へ飛び立った。
月へ向かう赤い翼を、猫は好奇の目で追っていた。
その横顔は、折り紙の猫に似て緑がかっていた。


人は紙飛行機のように
折られ投げられ
折り合いつけて流れてく

空の中で枠には収まらず
行き先も定まらず

人は紙飛行機のように
折り合い投げ合い
折り重なって飛んで行く

風の中で楽には収まらず
行き先も定まらず

上に上がったり
時には後ろに下がったり
いつも風の悪戯に
振り回されてしまうから
行き着く場所さえわからない

人は紙飛行機のように
寄り添って
寄り重なって飛んで行く
僕らはみんな紙切れではあるけれど
それなりの自由がある

飛んで舞って弧を描いたり
沈んで待って夢を描いたり
いつも神の悪戯に
振り回されてしまうから
たどり着く時さえわからない

僕らはみんな紙切れではあるけれど
それなりの意志がある

人は紙飛行機のように
当てのない空の中を
儚い翼で飛んでいく

風に乗って進んだり
風に戻され休んだり
飛んで舞って
いつかは落ちていく

僕らはみんな紙くずにはなるけれど
それまでの自由がある

人は紙飛行機のように
当てもない空の中を
儚い翼で飛んでいく
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雨が…

空を包み込んでいくのは、灰色の不安だろうか、それとも色を失った翼だろうか?
猫には、空の変化が世界を今にも劇的に変えていくように思われた。
けれども、空の大きさは猫が思うよりもはるかに大きく、この街の上の空の表情がいとも簡単に世界を変えていけたなら、世界はとっくに大きなまとまりを生み出していたかもしれない。
そして、猫はこの街の片隅にぽつんとひとり佇んでいた。空の様子を気にかけながら…。
やがて猫の期待に答えるように、雲が雨粒に形を変え始めると、猫は目を丸めて、息をもらした。
その横顔は、船底で花火を見つめる子猫のようだった。

今にも雨は
クジラの流す
涙のように
大粒の雨は
あなたの胸に
突き刺さりそうだ

今にも雨は
あなたの消えた
空のように
瑠璃色の雨粒は
私の中に
流れ込みそうだ

炎の空から
降り注ぐ
邪悪な聖水のように
今にも雨は
私の中で
溢れ出しそうだ

ひび割れて

白く丸い形をした物体は、鍋のもたらした高揚の中で最後の時間を過ごしていた。
おばあさんは、ストップウォッチを持つこともなく、のんびりと椅子に腰掛けてテーブルに肘をついている。
夕焼けの消えていく夕暮れの中で、おばあさんの食卓を飾るのはどんな卵料理だろうか?
そして、そんな料理にふさわしいワインとはどんなものだろう…
けれども、驚いたことにおばあさんの家には一本のワインもなかった。
その時、おばあさんに7分の経過を知らせるように、猫が鳴き声をあげた。
その横顔は、ロスタイムを失ったタイムキーパーのようだった。


古い酒をあおるように
小さなたまごが揺れている
ほんのわずかの間違いで
ひび割れて
眺めていても戻らない
ひび割れながら回り続ける

古い坂を下るように
小さなたまごが落ちてくる
ほんのかすかな手違いで
ひび割れて
忘れていても戻らない
ひび割れながら回り続ける

黒い雲に覆われて
ひびは日に日に大きくなって
恐竜たちが滅んだように
ひび割れながら
日々揺れながら
回り続ける

白い塩をかけても
優しい言葉をかけても
君だけ主役の世界は
もう元には戻らない

みんながみんな
日々揺れながら回り続ける

厚い空に覆われて
ひびは日増しに大きくなって
小さな大陸が沈んだように
ひび割れながら
日々揺れながら
私もその中で
回り続ける

空想の翼

「札束をビルより高く積み上げることはなかったけれど、私に降り注いだ年月は、私にゆっくりと年を積み重ねる時間をくれたんだね」
おばあさんは、猫に向かって話し込んでいた。
「今度生まれ変わったら、あんたは今度は何に生まれ変わりたい?」
猫は、不意に本棚に跳び上がると、ゆっくりと飛び立った。
猫の背中に美しい翼が現れるのを見て、おばあさんは少し驚き少し微笑んだ。
「おまは今度は鳥なんだね…」
散歩に出て行った猫の後姿に、優しく言った。
翼だけが、まだおばあさんの部屋の中で宙に浮き、かすかに動いているのをじっと見つめていた。
その横顔は、青雪を見つめる魔女のようだった。

なりたいと思ったのでなく
気がつくと
私は鳥だった
私は空の上にいる
星空を羽ばたく鳥のように
私は鳥だった
私は鳥
星は翼の中へ

なりたいと夢見たのではなく
気がつくと
私は人だった
私は地上にいる
大空を見上げる人のように
私は人だった
私は人
空は想いの中へ

言葉にならない歌のように
回らないバレリーナのように
想いはとめどなく果てしなく
神秘の消えた秘境の奥へ

乾いた大地を駆け巡り
レシピの消えた今日の中で
そっと時間を遡る
遥か星を突き抜けて
永遠求めて飛んでいく
いつかあなたに
届くほどに

テーマ : 詩・想
ジャンル : 小説・文学

カーテンの紡ぐ詩

おばあさんは、おもむろにカーテンをひきはじめた。
外の白さを見つめながら、どうしてそれがそんなに白いのか、まだ昼間ではあったけれど、こんなに夜に近い寂しさで白くなってしまったのかを考えながら、おばあさんは窓の端から端までカーテンを滑らせた。
その音は、小雨の降る砂利道を坊さんの乗った一輪車が通り過ぎる音に似ていた。
夕食の時間がやってきたと思った猫は、目を開けておばあさんの方を見つめた。
その横顔は、砂でできた猫のようだった。

街の景色は
どんよりよどんでいるから
今日はじっとカーテンをひいて
作り物の夜の中に
逃げ込もう

まじないを引く音は
外の喧騒をかき消すから
今日はじっとカーテンをひいて
もう一枚
カーテンをもう一枚
広げよう

いくら待っても
陽射しは入ってこないから
今日はすっとカーテンをひいて
もう一枚
紙くずをもう一枚
つなげよう

カーテンの向こう側
もう世界は見えなくなった
風もないのに波打って
小さな惑星を
青さで満たす

真っ直ぐ張りつめた朝も
今日は淀んで見えるから
今日だけ淀んで見えるから
だからじっとカーテンをひいて
おとなしく詩を書こう

誰かを切なくできるかな
カーテンに包まれながら
もう一編詩を紡ごう

単純な雑草

いつもの小さな公園を抜け出して、猫は未知の草原に駆け出した。
どこまでも続く草原、生い茂る草たちは、優しい陽射しの中で揺れている。
木々に吊るされたおみくじのように、絵馬に書き留められた決意のように揺れていた。
猫は、急に足を止めた。
この草たちは何を想い揺れているのだろう…。
わかるはずのないことを、時々は考えるのが猫だった。
3秒で停止し脳裏を駆け抜けた思考は、宙をさまよった後、猫の笑顔のように妖しく雑草の中に溶け込んでいった。
猫は、しばらくそれを目で追っていた。
その横顔は、方程式からもぎ取られたXのようだった。

雑草の伸び方は複雑で
あなたの考えも
想像も遠く及ばない
呼ばれることは稀
踏まれることは常
けれど気まま風のまま
今を生きてる

雑草の揺れ方は複雑で
誰かの優しさも愛情も
遠く届かない
知られることは稀
刈られることは常
だから気まま風のまま
今を生きてる

風の中に
謎めいて
傷つくままに
揺らめいて
深く
今に
根づいてる

テーマ : 詩・唄・詞
ジャンル : 小説・文学

見えないリンク

おばあさんの創る影絵は、魔術師の創り出す影絵ほどにちっぽけで美しかった。
おばあさんは、両手を奇妙な形に広げると影は雛を創り出した。雛はゆっくりと現れた。
次におばあさんは、キタキツネを創った。はるばる北の方からやってきたため、暑そうにしていた。
続いて赤とんぼが現れた。夏の夕焼けよりも赤く、おばあさんの瞳の奥までも赤く染めた。
一匹狼が威厳と共に現れた。右手と左手でそれは結局は二匹だった。
おばあさんが、両手を縦に並べ高く掲げると、偉い人が現れた。
いかにもえらそうにふんぞり返っている。
そこに最後の侍が現れた。もはや刀を持っていなかったが、侍はあくまで凛としていた。
猫は、そのすべてを目を伏せたまま見ていた。
あたかもピアノを聴いているようだった。
おばあさんは、最後に少し寂しげな表情を浮かべながら、影で不幸せの形を描いた。
そして、手を閉じた時、影が割れる音が冷たく部屋に反響した。
その時、猫は心地良さそうにヒゲをなでた。
その横顔は、光でできた猫のようだった。

自然に広がる
森のように
木は育ち
春めいて
見えないリンクで
つながってる
確かな囲いはないけれど
確かな約束はないけれど
もっと不確かな儚さで
確かにつながっている
光と影の向こう側
見えない輪が
包み込む

自然に広がる
村のように
行き交って
持ち合って
見えないリンクで
つながってる
確かな言葉はないけれど
確かな法則はないけれど
もっと確かな確かさで
ここからつながっている
光と影の逃避行
消えない雨が
流れ込む

見えない橋が遠くから
失われた星空に
浮かぶように
誰かが星の速さで
駆けてくる
みえる形はないけれど
手にする形はないけれど
想いの欠片が希望のように
きっと大きな確かさで
ここから
つながっている

果てしない行列

果てしなく続く行列は、あたかも復讐の連鎖のように地球を取り巻いているかのように思われた。
その逃れられない鎖のような行列の中で、猫もまたおばあさんの持つ鞄の中にひっそりと雛のように隠れ潜んでいた。
もう間もなく、新装オープンのこの巨大なびっくり箱は、人々の溢れる欲望を呑み込んだ戦場と化すのだ。
今日はいったいどんな掘り出し物が見つかるのだろうか?
猫は、鞄の口から少し顔を出して息をついた。
その横顔は、うそを並べた文集の一文字のようだった。

地平線の上にできた
行列のように果てしがない
それでもあなたは
並ぶのでしょう
求めるものが
人と同じならば
誰かの愛に乗っかるように
想いが想いに続くように
また人の列が
今日も続いていく

生命線の下にできた
行列のようにやるせない
死んでもあなたは
並ぶのでしょう
過ぎ行くものが
人であるなら
誰かの恋に乗っかるように
願いが願いを呼ぶように
また人の列が
明日へと続いていく

道はまた
血でつながって
過去は空の彼方から
虹を越えて未来へ進み
物語は
人の手に乗って
数珠つなぎの言葉のように
謎を持って流れ行く

また人の後に
人の道が
続いていく

春のブランコ

おばあさんは、5才の公園に帰った様子でブランコに揺られていた。
海の上で、風を受けてヨットの帆が揺れるように、それは小さな風ではあったけれど、おばあさんは楽しそうに揺られていた。
「おばあさんは、ブランコの上で時間の海を渡っているのだ」
猫の頭の中を、空想の波が押し寄せてきて、優しい春の青さで満たした。
おばあさんは、時の経つのを忘れ、ブランコの上で何度かの冬を過ごし、何度目かの春を迎えた。
その間、猫はじっとおばあさんを見つめていた。
あるいは、季節そのものを見ていたのかもしれない。
その横顔は、季節に貼り付いた昆虫のようだった。

ピアノの消えた教室から
旋律と共に駆け落ちた
揺れて揺られて
揺られて落ちた
戻れないブランコ
もう行ったきり
何も振り返れない

証明の消えた存在から
自分と共に抜け落ちた
揺れて揺られて
振られて落ちた
戻れないブランコ
もう行ったきり
今も振り返れない

やっとここにこぎつけた
手にした絆を
きしませながら
木は朽ち果てて
知恵のない鎖は
海の向こうで
ずっと 空回り

それでも彼女は
折れたクレヨンをつなぐように
それでも彼女は
折れたクレヨンで海を描くように
波が見えなくなるまで
漕ぎ続けた

揺れて揺られて
ずっとここで
ずっとこのまま
揺れたまま
戻れないブランコ
もう行ったきり
誰も振り返れない

底なし沼から見る空は

おばあさんの家にはそこそこの庭があり、こそこそとした裏庭もあった。
そして、恐いのは裏庭の方で猫はまた足を滑らせてしまった。
深い沼が猫の足を、重い冗談のように呑み込んで行く。
その感触は、借りてきた猫の右手のように冷たかった。
その時、おばあさんが手を差し伸べてくれたのを猫は見た。
その横顔は、天使を見つめる猫のようだった。

今そこにある 底なし沼
すぐそこにある
底の知れた 底なし沼
底なしの すぐそこで
訪れない 花を待つ

今そこにある 底なし沼
どんな賢者も
今はまだ
その底を知らない

底知れぬ底なし沼
どんな演者も
いつだって
その驚きを
隠せないまま
底知れぬ深淵は
延々と奥深く
永遠に遠い謎

大地を震わす
木琴も
店を揺るがす
ラストオーダーも
その底に
届かない
望まない願望も
失わない失望も
みんな
同じ生き物のように
みんな同じ
ガラクタのように
のみ込んでいく

今そこに
ほらそこにある
底なし沼
両手を広げて
待っている
あなたのくれる
太陽を

名前

クロッカスは春を喜びながら咲いていた。
ラッパスイセンが愛を歌いながら咲いていた。
オオイヌノフグリが子犬のように愛らしく咲いていた。
その向こうには、花が咲いていた。
その花の名は……
猫の頭の中を、記憶が花のように駆け巡り、春が訪れるのを待つように記憶が訪れるのを待った。
けれども、それはついに目覚めることはなかった。
「新しい花だ!」
猫は喜びを表すために、花の周りを駆け回った。
それは、遠い異国の村で見られる猫の民族的な踊りに似ていた。
猫は気がすむまで、新しい花の周りを回り続けた。
ようやく、足を止めて花の方を見つめる。
その横顔は、ベリーニの絵を見つめる猫のようだった。

君の名は猫
動物の中では
特別な存在
けれども
もっと小さな名前が
あなたを
猫の中でも
特別な猫にする
数字ではなく擬音ではなく
特別なものに変える

君の名は人
動物の中では
特異な存在
けれども
もっと小さな名前が
あなたを
大勢の中でも
特別な人にする
肩書ではなく制服ではなく
特別なものに変える

名を持てば
そこからあなたは
特別な存在
名を知れば
もっと
特別な存在に
近づける

名もないどこかの街中を
名馬の嘶きが通過する
名は記憶に刻まれて
誰かは敵意を込めて
特別な名を叫ぶ

名は心に刻まれて
誰かは愛を込めて
あなたを呼ぶだろう

あなたの本

細かい字を読むのが苦手だったおばあさんは、今日は絵本を読んでいたのだ。
猫もまたテーブルの上でじっとヒゲを通して絵本を覗き込んでいる。
猫と魔術師と村人とお姫様が絵本の中で踊っていた。
絵本の中の猫は、絵本の中の存在ではあったけれど、今にも本の中から飛び出しそうだった。
絵本の外の猫は絵本の中に入りたそうだった。
本当に、入りたそうだったのだ…。
けれども、猫は、絵本の中に一度も入ったことがなかったのだ。
その時、絵本の中の動かない城の中で、お姫様の口元が少しだけ動いたのを猫は見てとった。
猫は少し、目を丸くしたようだった。
その横顔は、魔女に心奪われた猫のようだった。

海辺の月明かりで
読む本は
あなたの描いた
薄っぺらい ファンタジー
魔女は 呪いを持て余し
王は 城を持て余す
あなたの魔女が
友達で
魔女の魔法で
夢をみる

真昼の月明かりで
読む本は
あなたのくれた
青く大きな テレパシー
あなたの空が
憧れで
あなたの雲で
涙する

何度も何度も
読み返し
ずっと何度も
読み返し
今 また
読み返す


夜の雨音で
聴く本は
何度も開いた通り道
また最初から
また途中から
台詞は雨に溶け込んで
ボロボロに色あせた通り道
私の世界が冷たい時
あなたの世界は温かく
私の世界がダメな時
あなたの世界で生きていた

月の薄明かりで
読む本は
いつも
私の宝物

みんなの言葉が死んだ時
あなたの言葉で救われる
すべてがなくなりそうな時
あなたのくれた
物語の中に
そっと光は射し込んで
そっと私を照らし出す

世界の暗がりで
読む本は
あなたの描いた
儚く 明るい
ファンタジー
今も
私の
宝物

いつでも
私の
宝物
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junsora(望光憂輔)

Author:junsora(望光憂輔)

おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
たいした意味などありゃしない


旅の途中の紙くずたち
今日も散らばって行こう
いつも破り捨てられても

猫と婆とそんな横顔はリンクフリー
「喜多さん、いいとこばっかじゃねえか」

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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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