心 の 隙 間 か ら 出 て お い で
寂しいひな祭り
2006-03-03 Fri 13:19
3月だというのに、街は2月下旬並みの寒さを保っていた。
あるいは、真冬の寒さを包み込んだパイの中に、3月がまだ包まれていた。
そして、2月は遥か昔のことだった。
よそよそしいそよ風が吹き付ける階段の上に、おばあさんの置いていった小さなあられが、猫の方を向いている。
雛のような顔で見つめる丸い粒を、猫は自分の年の数だけ食べなければならないような気がした。
けれども、同時にそれは何かの思い違いであったような気もしたのだ。
いずれにせよ、誰がそんなことを気にするというのだろうか…。
猫は考えることを止め、カリカリと音を立てて食べ始めた。
それは、春の足音をかき消す馬の蹄の音だった。
その横顔は、終わらない店じまいの中で客を待つ店主のように楽しそうだった。


灯りをつけても
誰もいない
今日は
寂しい ひな祭り
みんな
どこかに
行ってしまった
音楽隊も 
太鼓の音も
消えてしまった
聞こえてくるのは
鈴の音
階段の上に
猫が一匹

灯りをつけても
誰も見えない
みんな
仕事に
行ってしまった
玩具の兵隊も
笛の音も
消えてしまった
聞こえてくるのは
鈴の音
階段の上に
ただ ひとり
今日は
寂しい ひな祭り

別窓 | 猫と婆とそんな横顔 | コメント:0 | トラックバック:0 |
| 猫と婆とそんな横顔 |