心の鼓動
2006-02-03 Fri 12:46
魔術師はどこからともなく、どこからともなく、どこからともなくやってきた。
毒々しい烏の放つ言葉の包囲網から逃げ惑いながら。
風をなくしたヨットのように、交わらないクロスワードのように歩いていた。
そんな魔術師が言葉の網の中に小さく魔法を投げ込むと、
カラスの鼓動がガラスの心に変わった。
けれども、それ以上のことは何も起きなかった。
「僕の魔法が誰かを助けるなんてことはないんだよ」
折りたたんだ黒い傘のように縮まった。
それから、傷心の翼を広げるようにして魔術師は飛び立とうとした。
けれども、彼には翼はなかった。

もしも言葉に 心がなくなっても
単語のように 冷え切っても
傷つかないほどに
心をなくしたくはない
それなら心を 痛めていたい
痛みを心で 感じていたい
傷ついている時の方が
思慮深くなれるのだから
もしも最初から 心がなくっても
私が私でないと わかっても
傷つかないほどに
心をなくしたくはない
それなら心を 痛めていたい
痛みを心で 感じていたい
傷ついている時の方が
思慮深くなれるのだから

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