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空っぽの砂時計

赤い砂は、深海で過ぎ去る時間のように、ゆっくりと、穏やかな波のように、
流れ落ちていた。
砂の刻む時間を、猫は一心に見つめている。
けれども、猫は砂を見ているのではなく、砂の向こうにある時間を直接見ていたのだった。
人間の目に映らないものが、猫には見えてしまうけれど、それを人に言ったりすることもなく、自分の胸にだけ留めておくこと。
それが猫の美徳というものだろうか…。
あの砂がすべて流れ落ちてしまった時、誰かがここを訪ねてくるのだろうか?
あと少し… あと少しだった。
けれども、猫は少し訝しげに首をもたげた。
永遠の一瞬をつかみ取るタイムキーパーのような横顔だった。


もしもあなたの砂時計が
空っぽになってしまったら
私の砂漠に帰っておいで
私はラクダのこぶの真ん中で
空を見上げて待っているから

もしもあなたの心の砂が
風で飛ばされてしまったら
私の砂漠に拾いにおいで
私は干からびたオアシスの中で
冷たいスープを作って待っているから

どこまでも続く砂漠の中で
わたしはいつでも
いつまでも
待ちわびているのだから
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哀しみの言葉

田舎の王様に追われるようにして、猫はふらふらと歩いてきた。
傘たての中で朝を迎える子猫のように、縮こまり、言葉のスパイクで踏みつけられたように、首筋は赤く滲んでいる。
まだとても、とても小さい子猫だったのに、全身がずぶ濡れだった。
そして、その心の中までも涙で濡れているように見えた。
心の中に涙を抱え込むことでしか、猫は悲しめないのだ。
瞳の中では、スパイ衛星のように疑問の影が揺らめいていて、
その横顔は、心の冷蔵庫が9℃下がったように冷たかった。


あなたは とてもかわいそう
力でしか
何かを 表現できないんだ
何かを 壊すことでしか
自分を 証明できないんだ
あなたは とてもかわいそう
けれども 同情はしないんだ
もっと大きな 哀しみが
世界に 溢れているのだから

あなたは とてもかわいそう
力でしか
何も 解決できないんだ
人を 傷つけることでしか
あなたは 自分を守れないんだ

あなたは とても
とても かわいそう
産声を あげた時
あなたの心は
とても 真っ白だったのに
あの空を 見てた時
あなたの目は
とても 澄んでいて
世界を 救えるほどに
きれいだったのに
そんな風になるだなんて

ねえ 神様
言葉は
何のために
あるのかな
私は 同情はしないんだ
もっと 大きな哀しみが
世界に 溢れているのだから

雨の幻想子守唄

他人の家の軒先で、猫は、ただじっとたたずんだまま、雨のメトロノームが奏でる独演会に耳を澄ませていた。
それがどこであろうとも、雨の音符を聴けば猫は思い出すことができた。
あの時の雨、あの時の雨宿り、あの時ぼろぼろだった傘のことを…。
あの時もし晴れていたなら、冷たい雨のど真ん中で傘をさしてただ何かを待ち続けていた女の面影を、今思い出すこともできなかっただろう。
だから、雨で良かったんだ。
雨は、時に風景を強く印象付けることができるのだ。
雨の独演会はよりいっそう激しさを増し、すべての騒音を消し去ろうとしていた。
けれども、猫は心地良さそうに目を閉じて聴き入っている。
雨の幻想子守唄を聴く猫のような横顔だった。


しくしくと
窓を叩く
雨の幻想曲が
私の今の子守唄
眠りの中まで
染み込んで
私の中で
歌い始める
悲しいことも
泣きたいことも
すべて
洗い流してくれる
恵みの雨が 通った後で

ちくちくと
ガラスを叩く
雨の殴り書きが
私の今の子守唄
記憶の 通り道に
入り込んで
私の体を
突き抜ける
うれしいことも
楽しいことも
すべて
洗い流してしまう
憂いの雨が 通った後で

雨が私を 
駆け抜けた時
すがすがしく 泣き止んだ
私の体は 目を覚ます
もうみんな 過去のこと
今からまったく
新しい自分

はじめまして

優しいミルクセーキ

春の風に乗って愛を届ける紙飛行機の後を追って、猫は駆けてきた。
その足取りは、月の砂漠でタップを踏む猫のように軽やかで、陽気だった。
もしも紙飛行機が、地球を半周するまで飛び続けいたとしても、
猫は元気にその後をついていっただろう。
けれども、紙飛行機は夕陽のように静かに沈んでいく。
着陸した砂の上で、一つのグラスが涙を浮かべながらたたずんでいた。
猫は立ち止まり、グラスの中に視線を落とした。
その横顔は、好奇心に駆られ天国の湖を覗き込む猫のようだった。


ミルクセーキという名の
カクテルの中で
あなたの空と あなたの海が
混じりゆく
牧場の中で 木が育つように
ゆっくりと 時間が流れてゆく

ミルクセーキという名の
カクテルの中に
あなたの空と あなたの雲が
とけてゆく
陽だまりの中に 雨が落ちるように
私の記憶が 落ちていく
静かに 静かに 
めまいと共に しずくとなって

白く儚い カクテルの中で
あなたの言葉が 
浮かび とけてゆく
私はただ
見つめるほどに
酔ってゆく
何度も 何度も
見つめるほどに

偽りの証明写真

「私の証明写真は明らかに私と違っていたんだ」

偽りの看板を売りさばく道具屋の主人のような横顔で、
似顔絵師は、魔術師の似顔絵を描き終えた。
けれども、似顔絵には、真実が浮かんでいる。
魔術師は黒板の中に緑を見るように、
似顔絵の中に魔法の微笑を浮かべると、
そのままの似顔絵が偽ものの証明写真に変わった。
似顔絵師は消え去り、魔術師は恐る恐る写真を手に取った。


私の小さな 証明写真は
何も明かすこともなく
似顔絵ほどにも
微笑むこともなく
ただ 餅のように
そこにある 生活のように
張り付いている

私の小さな 証明写真は
真実を告げることもなく
似顔絵ほどにも
悲しむこともなく
ただ 家のように
そこにある 骸骨のように
張り付いている
違うんだ
私は
本当は
もっと 違うんだ

朝の幽霊

希望も絶望も近づけない森の中で、
猫は、自由研究のテーマを探す幽霊のような横顔で、
朝のかけらを拾い集めていた。
そして、夜が明ける頃、猫は新しいテーマを求めて森を飛び出した。


早朝という名の
朝の中を 逃げ出した
それはまるで ゴーストタウン
幽霊の歩く街
生きてるものは 気まま猫
朝のように 丸まって
夜に別れ 告げながら
雲が 地上を照らし出す

朝の中を 抜け出した
それはまるで ゴーストタウン
幽霊の集う街
生きてるものは 気まま猫
雲のように 縮まって
夜に別れ 告げながら
雲が 私を映し出す

幽霊は 無口に
去ってゆき
人は言葉を 紡ぎ出す
私は 歩き出す
本当の朝の中を
太陽はまだ 顔を出さない

ワインの涙

冬が終わりに近づくにつれ、なぜか暖かさが増していくように感じられた。
渡せないバトンのように、揺れながら風が夜を包み込む。
雨がワインに変わった後の夜の公園で、
うまい棒に小さな頭を乗せて、猫は眠っていた。
待ち人を待つ山羊座のお姫様のような横顔で、
春を待ちながら、記憶が眠りの中をさまよっていた。


紙飛行機で
飛び立った
戻らぬ翼を 待つ女
枕のない 夜でさえ
涙が 枕を埋め尽くす
ソムリエの こぼした
ワインのように
きれいな涙

紙風船が
舞っていた
戻らぬ空を 待つ女
枕のない 夜でさえ
涙が 枕をとかします
ソムリエの こぼした
ワインのように
儚い涙

二色の虹

その虹には何かが欠けていた。
猫は、虹の上で番犬がするように小首をかしげてみた。
自然の作り出す優しさか、あるいは虹らしい色使いが欠けいるのか…
きっと空の画家が、まだ風邪をひいているんだろう。
猫は、川に浮かぶ虹を眺める漁師のような横顔で、
自分を納得させると、また歩き出した。


たった2色の虹の街
白と黒の寂しい街
積めない積み木を
積み上げて
ひらがなだけを
積み上げてできた
風通しのよい
この家で
ぼくらは今
寒さをしのいでいる

たった2色の虹の街
君とぼくの寂しい街
読めない漢字を
投げ捨てて
ひらがなだけを
積み上げてできた
風通しのよい
優しい
紙の家
ぼくらは今
寒さをしのいでいる
今はこうしていよう
明日は
もっと色がつくよ

雪の文字

流れ星に乗ったスピードスターのような横顔で、
猫は雪だるまに追われて駆けてくると、かまくらの中に逃げ込んだ。
けれども、温かい雪の家ももう融け始めていた。
雪だるまの口の中で、苺味ののど飴がとけてゆくように。


どす黒い ホワイトボードの上に
雪の文字を 浮かべよう
優しく 陽気に
雪の文字は とけてゆく
だまされ 傷ついて
そのせいで とけてゆく
そしたら また
雪の文字を 浮かべよう
優しさの中を 
雪が降り積もるように
言葉の中を 手を振って
進むんだ
一瞬の言葉は
凍りついた 向かい風の中でさえ 
心の中で 温まる
そしていつか とけてゆくのだから

猫の額に海が浮かぶ

星を見失った占い師のような横顔で、
猫は、足早に通り過ぎる夕方の人々の靴音を聞いていた。
一時間前に止んだ雨が、また降り始めた。
だからなんだという顔をして、猫はまた下を向いた。


猫の額は
海のように 広くなって
海は人の 心のように
狭くなって
子犬は 縫いぐるみみたいに
おとなしくなって
縫いぐるみは 子犬みたいに
動き回って
ネズミは狐色 狐は柿色で
狸はひとつも眠らない
それでも あの空は
あの日の空とは
それほどには 変わらないのだ
それでも あなたの心は
ずっと 覚えているのだ
だからなのだ だからなのだ

この冬の私の森の中の太陽

魔術師は、まるで誰かに呼び止められたかのように後ろを振り向いた。
振り返った先にあったのは、自分が歩いてきた昨日だった。
魔術師は自分を追いかけてくる昨日と昨日の自分に向かって、魔法の言葉を投げかけた。
雨の音に混じって、昨日の手前側が明日の向こう側に変わった。
けれども、それ以上のことは何も起きなかった。
「狐を化かすほど簡単じゃないんだ」
彼は昨日に追い抜かれないように、森の中を駆け出した。


私の森の中の 太陽は
白い雪の降る 夜の中でも
赤く 輝いている
誰にも奪うことは できないのだ

私の森の中の 太陽は
ひどい雨の降る 夜の中でも
本当は 輝いている
誰にも汚すことは できないのだ

私の森の中の 太陽は
本当は ずっと遠くにあるのだ
手に触れることも できないのだ
それでもいつも 近くにいるのだ
それでもいつも 温かいのだ

本当の理解者

みかんに乗って遊びリスのような横顔で、
猫は、巨人二人分の高さのある塀の上から、飛び立つと、
数秒間空中に浮いていた。
そして、猫のようにひらりと着地した。


あなたの心が
汚れた心を洗う
アライグマの石鹸のように
磨り減っていっても

本当の理解者が
近くにいるとは限らない
キャベツ畑の中に
みかんが 落ちてることもある
目に映るものが
本当だとは限らない

本当の理解者が
遠くにいるとは限らない
大学ノートの中に
絵本が 落ちてることもある

本当の理解者が
どこにもいないとは思えない
見知らぬ土地の上に
優しさが 落ちてることもある

本当の理解者が
近くにいないとも限らない
図書館の中で
サッカーボールが
転がってくることもある
目に映らないものが
本当でないとは限らない

猫の認印

無実の罪という長いコートを着せられた旅人のような横顔で、
猫は真夜中の文房具屋の中で目を光らせていた。
その目はまるで猫の目のようだった。


屋台の文房具屋で
心の認印 買いました
この小さな 文房具で
すべてが 巧くいく
私が私と認められる

古代の文房具屋で
心の認印 買いました
現代まで生き延びた
文字を記した 小道具で
何かが 変わってゆく
少しずつ 少しずつ
私が私と認められてゆく

真実目覚まし時計

恩知らずな鶴のような横顔で、
猫は雪の枕に頭をのせて眠っていた。
夜明けのモグラが真実を掘下げているような目覚まし時計の音が、
午前7時を告げた。
猫は、ゆっくりと真実の中に目を覚まし始めた。

白く騒然とした静寂の中で

「この絵には、まだ何かが欠けている」

画家は、小首をかしげながらパレットの中で絵の具を調合し始めた。
魔術師は、画家の後ろから覗き込むように、何かをつぶやきながら、絵の具に色のない魔法を溶け込ませた。
虹の真下で龍が流す涙のように、絵の具が奇妙な色に混じり始めた。
絵心のない画家から得体の知れない何かが生まれ始めていた。


猛然と進む
猪の持つ時計の中で
振り切れない振り子のように
オレンジ色の夜が光る
私は
騒然とした静寂の中で
揺ぎない不安に包まれる
それは何かわからない
わからないということ以外は
今は ポケットに入れておく
霊気に満ちた幽霊が
この夜をまた飲み込んで
駆けて行く
そして
騒然とした静寂の中で
揺ぎない不安を思い出す
わかってるんだよ
わからないということ以外は
けれども 何かが
まだ欠けている

世界の梅干し

「世界の梅干しはそんなに甘くはないぞ」
木登りの途中で先生が叫んだ。
言葉の意味を考えるよりも速く、無意味さが駆け抜けていく時、
12時間目のチャイムがはるか遠くから聞こえてきた。
傷ついたクジラの鳴き声のようだった。

誰もいない人物画

町おこしの中で、担ぎ出された鬼のような横顔で、
猫は路地裏を駆けてきた。
それから、壁に描かれた人物画の上を、
おばあさんに対して、話しかけるようにひっかき始めた。
おばあさんがいるとしたら、彼女は無言だった。


人の消えた
人物画の中で
笑顔が消えて 笑い声が消えて
背景が残される
それはまるで 風景画のように

君の消えた 風景の中で
笑顔が現れ 笑い声が現れて
背景が残される
それはまるで 背景画のように

ただ風と空気と
虚無を 抱え込んだ
背景が残される

愛を検索した日

洗い物を溜め込んだアライグマのような横顔で、猫は座っていた。
おばあさんが袋いっぱいの洗濯物を洗濯機に放り込むと、
猫の目は心の洗濯機の中に沈んだコインにように光った。


恋する機会 奪われて
機械任せに 恋をする
選択機でふるいにかけ
条件付けで 絞り込み
決定ボタンで 答えが出る
きみが そう

恋する機会 失って
機械任せに 恋をする
選択機でふるいにかけ
思いのままに セッティング
決定ボタンで 理想が見える
きみが そう
きっと そう
検索で始まる 恋もある
計算で終わる 恋もある

ひねくれた空

魔術師は、善良な悪夢から覚めたまっすぐな朝の中を、
どこへとも続く、まっすぐにのびきった道の上を、ひとり歩いていた。
なぜか迷いながら、なぜか立ち止まりながら、なぜか空を見上げながら。
そんな魔術師が、道の途中で未知なる魔法を試してみると、
まっすぐな道の向こうがひねくれた空に変わった。
けれども、それ以上のことは何も起きなかった。

「天気雨をポケットにとどめておくことはできないんだ」

雲と雲がぶつかりながらはじけ飛ぶ、
雲の切れ目から新しい雲が出てはまたはじけ飛ぶ。
そんなひねくれた空を見上げながら、魔術師は歌いながら歩いていった。

澄み切った 濁り空から
止まない 天気雨が降る
それから
私は 空の地上絵の中を
90色の 絵の具を持ったまま
どこまでも どこまでも
飛んでいくんだ

満天の 真っ赤な青空から
止まらない 長い雨が降る
私は 空に浮かぶ地上絵の中を
90色の 絵の具を抱いたまま
永遠に 永遠に
夢見ていくんだ

忍者の目覚まし時計

オムレツの中に隠れ込もうとする忍者のような横顔で、
猫はジェットニンジンを枕にして眠っていた。
傷ついた忍者が心の手裏剣を投げる時のカサカサという目覚ましの音が、
午前7時を告げた。
猫は、傷ついて飛んでくる音を避けるように、何度も首を動かした。

間違いのなる木

「君たちの木登りは間違いだらけだ」
木の上から先生が言った。
「なぜなら、私の教え方そのものが間違いのなる木なのだから」
79時間目のチャイムが木々の間にこだました。
木が呻く声のようだった。

動かない城

魔術師はどこへともなく、並木道という名の坂道を迷いさまよい、百獣の王もいないサバンナにたどり着いた。
シマウマの背中でくじを引いたり、話の長いテナガザルに捉まったりしながら。
そんな魔術師は、いない百獣の王の鬣に魔法の風を吹きかけた。
何も起きず、何も変わらなかった。
けれども、野生の王国から文明の国王が現れた。
「裸の王様こんにちわ」
魔術師の微笑に対し、王様はおかしいほどに無言だった。
魔術師のさし出した左手を置き去りにして、西の方角に動いた。
裸の王は野生の姿を保ったまま、滅びた文明を探すよう自分の城を探して歩き始めた。

優しい言葉を
敷きつめた
砂の道
野生には
もう二度と 
帰る 
気のない並木道
私は私の作った文明の中から
猫の作り出す影絵の中から
自然を見続けている
不自然に
続く 
木のない並木道
文明が通った 後の迷い道

賢者の言葉

キャベツ1玉分の幸福を抱いた猫のような横顔で、
猫はオシムの言葉に耳を傾けながら、
ゆっくりと眠りにおちていった。

間違えない間違い探し

魔術師は、あまりに複雑すぎて単純にみえる街角の途中を、冬と夏が入り組んで曲がってできた道の上を歩いていた。
すれ違う人の中から、本当の理解者を探しながら。
そんな魔術師が、ケーキに文字を浮かべるようにのん気に魔法を浮かべると、
街角の多すぎる街の人探しが間違いが多すぎる間違い探しに変わった。
けれども、それ以上のことは何も起きなかった。
「街角を全部丸くするほど簡単じゃないんだ」
鬼の角のように折れ曲がった街角の向こうに、魔術師は間違い探しという名のゲームに埋もれながら、道を間違えながら歩いていった。

間違いが多すぎる間違い探し
それはデタラメと呼ぶほどに
正解を探す方が 早いくらいに

間違いが多すぎる間違い探し
ゼロからやり直す方が 必要なほどに
どれだけ間違いが 多いのだ

間違いが多すぎる間違い探し
けれども 間違い探しをすることすら
もう疲れていたんだから
何かが間違っていた
それは ある人には正解で
それは ある人には間違いで
そんな間違い探しには
本当の間違いもないのだ
正解はただ探すこと
自分の 見つけるべきものを
わからないから 探すだけ

待ち人待ちきれぬ街

魔術師は、どこへ行くとでもなく、待ち人も待たない街の中を歩いていた。
思い思いのぼろぎれを身にまとった街の人々とすれ違いながら。
今日一日の運勢を占うように、魔法の方位磁石で行き先を占った。
方向はどこにも、示されなかった。全くどこにも。
けれども、思い思いの洋服が重い重い幸福に変わった。
「受け止めるには重すぎる」
鉛を含んだように靴底は重くなり、雨を飲み込んだように魔術師のコートが背丈よりも長くなっていた。
彼は重い決意を着込んだように、待ち人も待たない街の中の一つの道を、歩いていった。
思い思いの幸福へと続く道を。

思い思いの幸福と
自分の中の 思い過ごし
ここでは待ち人も
待ちきれないのだ
この寂しい 大地の上では
待つには 長すぎるし
待たなければ より寂しい
去り際までも 笑ったまま
過ぎ去っていく
この短い 球技の中では
歩くには 短すぎるのだ
それを どう思おうが
それを 何と言おうかな

終着駅

キッカーは宇宙の車窓から星を眺める旅人のような横顔で、気持ちを置くようにボールを置いた。
5枚の壁、電車を待つ人垣のような壁が、立ふさがる。
そして、ゆっくりと我先にとキッカーに向かって近づいてきた。
主審の笛が、はやる乗客の心をなだめるように壁を下げさせた。
キッカーが左足を振り抜くと、ボールは超特急のような優雅さでトンネルを潜るように壁の間を突き抜けてゴールに向かった。
その時、キーパーは切符を確認しようとする車掌のように片手を伸ばした。
けれども、それより早くボールはネットを揺さぶっていた。それがボールにとっての終着駅だった。
車掌は何かに乗り遅れた課長のように、その場に膝をついた。
キッカーは、両手を広げ有頂天になって駆けずり回った。
空は馬鹿みたいに晴れ、彼は空と一緒にばかな気分に浸っていた。
銀河列車が駆け抜けた後のように、空がきれいだった。

心絵日記

魔術師はどこからともなく、頭に辞書をのせながら夜の上を綱渡りしながらやってきた。
難しい熟語を暗記したり、架空の四文字熟語を作ったりしながら。
そんな魔術師が999ページの24行目に魔法を挟み込むと、
頭の辞書が心の日記に変わった。
けれども、それ以上のことは何も起きなかった。
「どっちにしろ言葉からは逃れられないというわけだ」
言葉の海におぼれるようにして、魔術師は夜明けを目指して綱渡り的に歩いていった。

心の絵日記を
読みたい人が
無数にいて
けれども 同じほど
読まれたいと 願う人も
無数にいて それでいて

愛されたいと 願うなら
それなら自分はどうだろう
自問自答のリズムの中で
それなら自分はどうだろう
自分は 自分は 自分は
人に 何を あげられる
小さな愛や 小さな勇気
そんな 何かなのか
小さな希望 小さな冒険心 
小さな春
そんな大きなものが
たった 一人にだって

愛されたいと願うなら
願うだけでは叶わない
それでもなお
きっと だからなお
愛されたいと願うだろう
今 誰かが願っているように

裸足の靴音

魔術師は、絶望の夜に降り注ぐワインのように、喜怒哀楽の交じり合って降る雨の中からやってきた。
野良猫の蹴飛ばした長靴が、鉄の意志を受け継いだ磁石のように、魔術師の後をコツコツと着けていた。
魔術師は真実のリトマス試験紙を試すように、雨に魔法を浮かべると、心の隙間にワインの波が訪れるように、猫の姿が揺らぎ始めた。
長靴を脱いだ野良猫が裸足を履いたシャムネコに変わった。
けれども、それ以上のことは何も起きなかった。
「1000年の生活より一日を選ぶほど簡単じゃないんだよ」
猫も履かない長靴を履いて、魔術師は陽だまりにも似た水たまりの上を陽気に駆けていった。

今日は裸足で駆け出して
胸の靴音響かせて
駆け足で 駆けていく
涙まじりに 飛び出して
今日は裸足で駆け出して
けれども 靴紐解け出して
駆け足で逃げていく
声もなくした 鳴き声で
今日は裸足で駆け出して
胸の靴音響かせて

鬼の豆鉄砲

鬼の角を枕にして眠る勇者のような横顔で、
猫はチョコ棒を枕にして眠っていた。
鬼が豆鉄砲を放つ音に良く似た目覚まし時計の音が、
午前8時を告げた。
朝が、ゆっくりと鬼の角の色に染まり始めた。

心の鼓動

魔術師はどこからともなく、どこからともなく、どこからともなくやってきた。
毒々しい烏の放つ言葉の包囲網から逃げ惑いながら。
風をなくしたヨットのように、交わらないクロスワードのように歩いていた。
そんな魔術師が言葉の網の中に小さく魔法を投げ込むと、
カラスの鼓動がガラスの心に変わった。
けれども、それ以上のことは何も起きなかった。
「僕の魔法が誰かを助けるなんてことはないんだよ」
折りたたんだ黒い傘のように縮まった。
それから、傷心の翼を広げるようにして魔術師は飛び立とうとした。
けれども、彼には翼はなかった。

もしも言葉に 心がなくなっても
単語のように 冷え切っても
傷つかないほどに
心をなくしたくはない
それなら心を 痛めていたい
痛みを心で 感じていたい
傷ついている時の方が
思慮深くなれるのだから
もしも最初から 心がなくっても
私が私でないと わかっても
傷つかないほどに
心をなくしたくはない
それなら心を 痛めていたい
痛みを心で 感じていたい
傷ついている時の方が
思慮深くなれるのだから
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junsora(望光憂輔)

Author:junsora(望光憂輔)

おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
たいした意味などありゃしない


旅の途中の紙くずたち
今日も散らばって行こう
いつも破り捨てられても

猫と婆とそんな横顔はリンクフリー
「喜多さん、いいとこばっかじゃねえか」

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『折句ストレート』

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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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