第九ボタン
2006-01-30 Mon 20:47
魔術師はどこからともなく、陽気な森の中から天使と待ち合わせしたり、悪魔と鉢合わせしたりしながらやってきた。
そんな魔術師が、古い鞄を開いて新しい魔法を取り出すと、
天使の第二ボタンが悪魔の第三倉庫に変わった。
「簡単どころか最悪のことだ」
気がつくと、魔術師はすっかり悪魔の倉庫の中に閉じ込められていた。
悪魔の倉庫らしく、窓も笑顔もなかった。
「せめて第四だったら良かったのに・・・」
魔術師は、弱音をはきながら絶望にくれていた。
倉庫のまばゆい暗闇が、弱気を盛り立てているようだった。
・・・

魔術師は悪魔の第三倉庫の中で、悪い夢を見たり見なかったりしながら、一晩を眠りに費やした。
そして目覚めた時、魔術師の中で、頑ななドアを開く魔法の鍵も目を覚ました。
針の穴に魔法を通すように、魔術師は鍵穴の中に魔法を送り込んだ。
静寂と闇が悪魔の倉庫から逃げ出していくのが感じられる。
頑丈な門は消え去り、どこからともなく幻獣の獏がやってきた。
「どうも。こんばんわと言っておこう」
魔術師は悪い夢のかけらを獏に投げつけながら、暗い倉庫を後にした。
獏も食べない夢の残骸が、一時の間地面に落ちて残っていた。

口もあけずに食べつくす
言葉の嘘と むなしさを
何も告げずに飲みつくす
言葉のとげと 真実を
扉も開けずに入り込む
心の秘密の中にさえ
真っ赤なうそを 真っ青の赤で
包み込んで
ゆっくり 自分になりすます


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