鶴の翼
2006-01-21 Sat 10:03
魔術師はどこからともなく、鼻歌交じりの粉雪の舞う季節の中からやってきた。
森の狼の放つ鋭利な言葉の刃物を、丸まった日の光に包み込みながら。
そんな魔術師が、ちっぽけな呪文を小手先の技術で転がせば、
亀の万年筆が鶴の便せんに変わった。
けれども、それ以上のことは何も起こらなかった。
「天国に手紙を届けるほど簡単じゃないんだ」
魔術師はさっそく、小鬼の悪戯をたしなめる赤鬼の眉間のように、
しわのよった便せんに天国の手紙をしたためた。
それは鶴の翼そのものとなって、どこへともなく飛んで行った。

もしも僕のちっぽけな魔法が
今よりもっとちっぽけで
今よりもっとつまらなくなったら
その時は笑っていられますように
無風の風が無慈悲な夜より
魔法のかけらを運んでくるように
上の空で僕のそばで
見守っていてください

別窓 | そんな魔術師 | コメント:0 | トラックバック:0 |
| 猫と婆とそんな横顔 |