心 の 隙 間 か ら 出 て お い で
白鳥の消えた湖
2005-12-24 Sat 21:41
紙くずの勇者は、ニットのゆ冠を目深にかぶり、砂もない砂利道に座っていた。
石ころを冬の湖に投げ込むと、水を打ったように水を3回打って消えていった。
けれども、二度目に投げた時は、
水に当たって真っ直ぐ自分の方に跳ね返ってきた。
彼は驚いて、無口になったアサガオのような顔で天を仰いだ。
どこからともなく、勇者の上から流れ星が一つ、
音もない雨音を抱え込んだイルカの様に通り過ぎていった。
紙くずの勇者は、願い事もせずに光るイルカを見送った。
けれども、流れ星は湖の上に落ちて浮かび、
しばらくしてそれは、白鳥の形を形作った。
光の白鳥は、身じろぎ一つせず雪のように居座っていた。
「ここに帰ってきたんだね・・・」
彼は、呼びかけるでもなく声に出してそう言っていた。
けれども、彼が手を伸ばした瞬間、白鳥は羽音も影も残さず消えていた。
冬の湖は水を打ったような静けさを残し、星の瞬きだけを映していた。

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