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成長期

「なるべく高い木に登りなさい」
その手は食うか。
同じ過ちを繰り返しはない。
僕は、なるべく高くなく、それでいて低すぎない木を選んで登った。
いつ、チャイムが鳴ったとしても、すぐに降りれるくらいの。
天辺まで登りつめた頃に、先生の声がした。

「長所を伸ばしなさい」

すると、木は伸び始めた。登っている最中に遠慮なく伸び続けるので、僕は振り落とされないように必死にしがみつきながら、それでも伸びてゆく木に負けないようにどんどん登った。登ってしまっていた。
地上の先生が、ライオンの耳たぶのように小さく見える。
ずっと遠くで、鳴っているのはチャイムのようだ。
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高木

「一番高い木に登りなさい」
扇子を広げながら、先生が言った。
「一番高い木に登った人が、一番偉いです」
高い木を見つけて、登った。
天辺まで登ると、そこは突き抜けた場所だった。
けれども、僕は踊らされていたのだ。

ずっと遠くで、きっとあれは地上の方だろう、猫がささやくようにチャイムが鳴っていた。
次の授業に、僕はきっと間に合わないだろう。
高いというだけで、そこは何もない場所だった。


飛行

「ここから飛び下りたらどうなるかな?」

ネコは笑いながら、こっちを見た。
4階の教室に残っているのは、二人だけだった。
校庭をゾロゾロと横切っていく、白い群れが見える。

「私が猫だったら、クルクルと廻って平気かな?」

憧れを込めて、ネコは言葉を続けた。
もしも何かだったら……
私たちは、そんな言葉あそびが好きだった。
そうして空想を泳いでいると、いつも時間は何気なく吸い取られていった。

「ジョン・マクレーンなら、3階の窓を破って助かるかも」

私も、主人公になりたかった。
物語は何でも良かった。

「ついでに学校全部を壊してくれたらいいのに!」

ネコは、半分本気だと思った。
死ぬほど嫌なことだってあるのだ。

「ねえ、鳥だったら……
 鳥は、怖くはないのかな?」

鳥が、遥か校庭の上空を優雅に舞っていた。
人でない姿を、ネコはまた憧れるように見つめながら大きく溜息をついた。
私はノートを一枚千切って紙飛行機を折ると、勢いよく窓から投げた。
夏の風に乗って少しの間上昇し、色のない空間を舞った。
真っ白い鳥のように……。

「なれるよね、
    ……   これから何にだって」

窓という窓を震わせるように、チャイムが鳴り響いた。
私たちは、もう行かなければならなかった。




テーマ : ショート・ストーリー
ジャンル : 小説・文学

ホームルーム

「今日の議題は何だ?」

先生が、
去年のことを思い出す鬼のような顔で問いかけた。

「まだ、決まっていません」

学級委員が、言い切った。
先生は、ポカンと口を開ける。
今だ、とばかりにみんなは一斉に消しゴムを投げつけた。
無数の消しゴムミサイルが飛び交って、まるで千秋楽で舞の海が優勝したように美しかった。

「決まってないとはどういうことだ!」

消しゴムをクジラのように吐き出しながら、先生は反論した。
決まっているのが当然だというような、ニュアンスが感じられる。

「今から考えるしかないと思います」
誰かが、言った。

西へ流れる雲のように、前向きな言葉だった。
僕らは、考えた。
今、話し合うべき議題を投げ合い、出し合い、潰し合った。
まるでK-1のリングのように、見守る女神はいなかったけれど僕らは決して手を抜かず足を止めて戦った。
時間が言葉の上を、ゆっくりと、あるいは猛スピードで過ぎていく。
空がもうすぐ、夏の雨をつれてくるだろう。
与えられた議題がないから、僕らは考え続けるしかなかった。

「何だっていいじゃないか!」

壊し屋ケンが吠えた。
みんなが瞬間言葉を失った。
先生さえも……。

世界一大きな議題の入ったオルゴールが鳴り始めたように、ゆっくりとチャイムの音が聴こえてきた。
今日の、ホームルームはここまで。

世界の梅干し

「世界の梅干しはそんなに甘くはないぞ」
木登りの途中で先生が叫んだ。
言葉の意味を考えるよりも速く、無意味さが駆け抜けていく時、
12時間目のチャイムがはるか遠くから聞こえてきた。
傷ついたクジラの鳴き声のようだった。

間違いのなる木

「君たちの木登りは間違いだらけだ」
木の上から先生が言った。
「なぜなら、私の教え方そのものが間違いのなる木なのだから」
79時間目のチャイムが木々の間にこだました。
木が呻く声のようだった。

1月の足跡

「世の中は常識だ公式だとがんじがらめになっているけど、
それを一つ一つ壊していくことが日本のお正月やないかな?」
木登りの手足を休めて、先生が言った。
2月が逃げるように、1月がものすごい速さで過ぎ去っていった。
あたかも猿が木から落ちるような、速さだった。

途切れ途切れの結論

「結論から先に言うが・・・」
木登りの途中で先生が言った。
それは合理的なやり方なのだ。
過程を楽しんでいた木登りが懐かしく思い出される。
44時間目のチャイムが途切れ途切れに鳴った。
壊れかけのチャイムのようだった。

まるで人間

「わしは人間じゃ!! 」
先生はまるで人間のような顔をして言った。
彼はガラスの心を持った鶴のような横顔で、
35時間目のチャイムを聞いていた。
すべてがあべこべになっていくのが感じられた。
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おかしな比喩を探し求める内に
いつしか詩を書きはじめました
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今日も散らばって行こう
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『ウィキペディア』












































 

「行き先のないバスに乗って
 あてのない旅をしています」

「僕たちは心の旅をまだ
 始めたばかりなんです」



「この場所は自由な場所。
 本当に自由すぎる」
「でもまだ足りないんです」





「春の足音を、
 しばらく前に、聞きました。
 私はもうとけてゆきます」
「大いなる誤解が
 とけていく速度で…」






『落書き』

偶然たどり着いたこの場所
あなたは何を探していたのです

求めるものと目の前にあるもの
それはどれほど違っていても
みかんの色は変わるのです

あなたという存在が
あなたを囲む海や人や森が
歌い励まし騙し傷つける頃
空想の世界の中で
生まれ変わるならば
いつかそれは
求めるものと同じであったか
近づいていくこともあるのでしょう

偶然目に触れた落書きに
こんなことが書いてあるとは
思わなかったでしょう
だからそれを望んで
これを書いたのです

少し時間を
無駄にさせてしまったね






『空白の壁ときみ』

壁が空いているから
ここを詩で埋めようかな

何も書くことはないけれど
何もない時だって
詩を書いていいんだよ

何もなくても
聴きたいときがある
きみの声を

点滅するバスは
行き先を決めかねているけど
もう詩は出発したよ

年中融けない雪だるまが
上で見てるんだ
これでまた融けにくくなった

壁が空いているから
サンドイッチのない詩を
猫に内緒で書いてる

見つかると嫉妬するからね

寝静まった頃静かに書いて
きみもやっぱり静かに読む

見知らぬきみ
またここで落ち合おう

きみの空いてる時間にね






『そんな横顔』

獣のような 大声で
どこかで 叫んだケダモノ
気高さを保ったまま
毛玉を嫌う ケダモノ
そんな生き物が いるのだろうか

僕らは 
不思議な生き物を見るような目で
不思議な生き物を眺めるんだ

1000年前から生きてるみたいに
落ち着いて 慌てない
何でも知ってるような
そんな横顔で
質問には 答えることもない

それでも 僕らは
昨日生まれた ばかりのような
そんな横顔 してたんだから
不思議な生き物 眺めるような
そんな横顔 してたんだから






『片隅』

ノートの片隅に
詩を書いている
誰に見せる
あてもない

頭の片隅に
詩を留めている
未だ現れる
気配はない

カフェの片隅で
詩を書いている
誰に会う
約束もない

世界の片隅で
詩と向き合っている
そうしていると
寂しくもない






『できそこない道』

完成することのない
できそこない道を
僕は歩いている

進んでいるのか
戻っているのか
それさえわからない

それでもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている

つまずくことばかり
挫けることばかり
たどりつくこともない

どこにもかえれない
できそこない道を
僕は歩いている






『なきうた』

理由もなく
泣きたくなるのです

二月が終わる頃になると
遥かなる距離を越えて
オレンジの光が
届いたのを知った時

理由もなく
泣きたくなるのです

小さな息吹が
青白い風の中に
溶け込む匂いを知った時

私は生まれるよりも
遥か前のことを
思い出しながら

理由もなく涙を流し
歌わねばならない
という理由において
歌うのです

遠い過去の人である
私の声が
あなたの元へ届く日を
想像したりしながら
























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